―なるほど。ところで青木さんとは荒鱗について話をしたりするんですか?

五十嵐 青木さんの池を見てもらうとわかりますが、紅輝黒竜や紅銀河など光りものが多くてすごくきらきらして華やかじゃないですか。だから目の保養も兼ねてお茶飲み話をしにいくんですけど、そのときに「鱗」で遊ぶのも面白いよねみたいな。うちがゴジラを出したときにあれは面白いと。青木さんとは一緒に作ってきて似通ったところがあるというか、自分も黄色系のラインナップを増やそうと思っていて。

イエロー金昭和・第8回国際幼魚品評会(2021)
ゴールドプライズ27部

―黄色系だと五十嵐さんオリジナル品種のイエロー金昭和が思いつきます。 

五十嵐 イエロー金昭和はもう少しというところで、墨は乗せられたんですけど逆に黄色い模様がぼやけてしまって。もうちょっとキワを出したくて濃いめの黄色の鯉を作ったら、その色ではきれいに見えないと人に言われてしまって。やっぱりレモン色みたいな色でなくてはだめだけど、それにキワを乗せるって相当な……と思いながら、毎年ひと腹ずつは採っているんですけど。それに売りどきが難しいというか、秋に上げてきたときは墨の色素が強いから色味が緑っぽく汚くて、2月ごろに墨が締まりきまって黄色が浮いてきて、ようやく黄色の金昭和だねとなるんだけど、それを今度立てると黄色が伸びてぼけちゃってキワが出なくなってしまったりで。

―なかなかデリケートですね。

五十嵐 うちはどうしても落葉や昔黄金、黄金落葉など渋い鯉が多いので、池が暗くなってしまうから黄色系が必要で、山吹とか張り分けなどが入ると、全体のイメージがすごく明るくなるから、できれば各品種の黄色系を目指してやっていきたいです。

―新潟県内水面水産試験場が取り組む黄白や黄三色、黄昭和など黄色系の鯉がブームになりつつありますからね。

紅輝黒竜
輝黒竜

五十嵐 丸誠さん(㈲丸誠養鯉場)が瑞穂黄金を作ってるんですけど、それの黄色がいたらと言われ、当初はドイツ黄松葉黄金みたいなものを目指してちょっと作ってみたけど、黒い荒鱗が乗るのと乗らないのに分かれて。別品種同士をかけないとそれが出てこないから、ドイツ山吹に黄松葉黄金をかけたり孔雀系の松葉をかけると、どうしても赤い色素が入ってくるので、赤シミが出やすくて体色がくすみやすいとか、そうすると率が悪くて。そこで解決策として、いっそのこと銀鱗を乗せてしまえみたいな(笑)。例えば黒いシミっぽいものが出ると、一色の無地物であればそれだけでだめになってしまうので、それまでもが模様として捉えられるような模様ものにしてしまえばいいのかなって。それで、黄竜という品種を作ったんです。

―今回の全日本で優勝した青木さんの鯉も黄竜でしたが、互いに名前を合わせて?

五十嵐 いや、そういうわけではないんですが、黄色い地体で荒鱗が黒い鯉ができ始めたときに、外見のイメージから「黄竜」と名付けたんです。そしたらたまたま青木さんも黄竜という名前で出したので、同じじゃないかみたいな(笑)。

―黄色という色は安定しないと聞きますが、やはり改良のネックに? 五十嵐 黄色ってすごく難しいんですよね。キワが出づらいので、当歳2歳で黄色っぽい鯉だなという鯉は、黄色い親鯉を使えばできるんですけど、どうしても大きくなるにつれてオレンジや赤っぽくなってキワが消えてしまったり。模様がある程度固定されて初めて品種として呼べるので、変化を楽しむと言えば変わり鯉だから変化を楽しめばいいんですけど、黄色い模様の鯉として売るからには黄色い模様をしっかりと固定しなければいけないです。

五十嵐養鯉場作出の黄竜