その後は近隣を含め、関東一円の鯉屋を訪れたのち、坂東コイ・ファームの鯉を見たことで「本気度」が上昇した。
「坂東さんは品評会志向の鯉屋なので、自分が選ぶ鯉も変わりました」
品評会に出品する楽しさを覚え、関東大会を中心に入賞を重ねた川上さん。当初は比較的小型の鯉で受賞することが多かったが、回を重ねるうちに「大きく育てて賞を取りたい」という気持ちが湧き上がってくる。それは坂東コイ・ファームが、従来の品評会用小型鯉だけでなく、立て鯉にも力を入れるようになった時期と重なった。国魚賞紅白との出会いはまさにその頃だったという。
「あれは2歳で買いました。オスだよと言われたんですが、当時からすごい体だったので、これは絶対欲しいと思って」
第49回関東(2021年)で壮魚オス総合優勝、第53回全日本(2023年)で65部オス優勝、そして今年の第54回で自身初めての国魚賞を受賞した。国魚賞は受賞までの1年間は飼育を委託していたが、ほとんどの鯉は自分で飼育するのが川上さん流。全日本の優勝や関東の部総合などは自宅から出品したものが多く、それらは満足感が違うと話す。
「鯉の楽しみ方は人それぞれなので、預けて品評会に出すのももちろん良いと思います。でも、自分で飼って賞を取ったときは、『意外といけるんだな』と自信になりました」

作出/㈱大石養魚場 取扱/坂東コイ・ファーム

作出/㈱小西養鯉場 取扱/坂東コイ・ファーム

作出/小泉養魚場 取扱/坂東コイ・ファーム

作出/大日養鯉場㈱ 取扱/坂東コイ・ファーム
現在は自宅に戻ってきた国魚賞紅白。70㎝台後半まで伸びれば、80部で再び賞を狙うことも考えている。よく言われるオス特有の肌の黄ばみについては、川上さんとしてはあまり気になるほどではないという。
「ニュークリーンアップ(成田養魚園㈱)の効果があるのかもしれません。説明書きによると品評会前に使うのが良いようですが、僕は毎日やっています。まあ、うちの水量だからできるのかもしれませんけど」
そして、現在はオス鯉に特化している川上さんの飼育に、今後は新たな楽しみが加わっていくかもしれない。春にメスと判明したものは野池に入れるのがこれまでのやり方だったが、今年はメスの明け2歳も自宅で飼育している。
「これからは将来性のある体の良いメスを、1〜2本までなら飼ってみようかなと。数を絞っていかないと、預け代だけでもかなりの金額になるというのもありますし……。とにかく、あまり無理はしないようにやっていきたいと思います。この5年間、賞を取るためにかなり無理をしてきて、嫁にもさんざん文句を言われてきましたから(笑)」
子供の頃からの夢だったという国魚賞を受賞し、少しペースを緩めることができそうな錦鯉ライフ。鯉たちと楽しむ晩酌を最優先に、品評会は上位を狙える鯉に絞って参加していくことになりそうだ。
「全日本一本でいこうかなと思っています。だけど、あいつあんなこと言って、ずっと負け続けてるよと言われるかもしれない(笑)。僕は鯉を飼う日本人がもっと増えてほしいと思っていて、インスタで宣伝しているんです。賞を取ったこの鯉は安かったですと言うと、鯉屋さんには嫌がられますけど(笑)。お金をかけなければ品評会に勝てないという風潮がある中で、こういう設備でもやれるんだということを知ってもらいたいですね」


