―水によっては紅の中から墨っ気が出てくることもあるわけですか。

平沢 あるでしょうね。でも、たとえば50部国魚賞のオスなんかはほとんど変わっていません(A)。紅は綺麗ですよ。この3本はオスで、メスは壮魚総合を使いました。

―中央は紅白のような五色ですね。

平沢 そうなんです。川上さんの五色で、買ってきたときは真っ黒だったんですけど、スパーンと引いて。紅白みたいになっちゃったけど、物は良いんですよ。今は背ビレの付け根あたりから少しずつ黒が出てきています。

―これは丹頂五色のセットですね(B)。

平沢 今年は丹頂同士にしてみました。

―本当に丹頂を作るためのセットですね。この組み合わせから出る普通の五色は?

平沢 丹頂から出た模様のついた鯉って、あまり質が良くない気がします。丹頂は良いんだけど。

―銀鱗五色でもときどき受賞していますね。あれは親も銀鱗なんですか。

平沢 片親が銀鱗でアネットです。ただ、銀鱗はとにかく率が悪いんです。五色以外では、今年は衣や銀鱗昭和、落葉しぐれ、ドイツ昭和、金昭和、三色、菊水、桜黄金、銀鱗空鯉、銀鱗の九紋竜、ドイツ落葉、金黄写り……。

―変わり系は全部1セットずつですか。

平沢 だいたいそうですね。菊水と金昭和は2腹採りましたけど。金昭和は高達さんのメスに金太郎のオスを掛けて。菊水は大元は弥源治さんの系統です。

―けっこう手広く採っているんですね。意外でした。

平沢 やっぱり1品種だと……。五色ってどうしても東南アジアに弱くて、持っていっても白くなってダメになると言われるので。東南アジアの業者でも、水温を下げる「チラー」(冷却水循環装置)を入れているところは、「全然OK、五色買うよ」と言って、向こうでもちゃんと飼えるようにしてくれてるんですけど、設備にお金がかかりますから。

―そこまでの設備を……。海外はすごいですね。

平沢 あと、うちは池がいっぱいあるので、それを埋めるためにたくさん採らないと。稚魚池で80面ぐらいあるんじゃないかな。

A…五色オス親
B…丹頂五色(銀鱗)セット(右/メス・左/オス)
C…五色セット(右/メス・左/オス)

―じゃあ池の数には困りませんね。

平沢 ありすぎるくらい(笑)。それでもまだ、池を借りてくれないかっていう人がいるんですよ。手が回らないから断ってる状態です。夏場の一番選別なんて、4人ぐらい人を頼んでやってますから。

―やはりかんのさんは五色、古くは三色というイメージがありますけど、変わり系を採り始めたのは比較的最近ですか?

平沢 落葉は昔から採ってますね。椿賞を取った銀鱗の九紋竜とかは最近です。親は川上さんに分けてもらったやつで、銀鱗と普通の九紋竜の両方が出ます。

―銀鱗九紋竜というのもなかなか率が悪そうで。

平沢 もうスーパー悪い(笑)。菊水もそんなに古くはないかな。桜黄金は初めてで、メスは丸博です。銀鱗の桜黄金に金太郎のオス、それに菊水のオスを一本入れて、菊水に荒鱗みたいに銀が吹けば面白いかなって。ドイツ昭和は丑蔵です。

―紅白が見当たりませんが。

平沢 紅白はないです。桃太郎の親で、二毛作目でたまに銀鱗紅白を採ったりはしますけど。普通の紅白も採ったことはあるんだけど、何回やってもできないんですよね。桃太郎から毛仔を送ってもらってもまったくダメ。だから土が合わないっていうことにしてるんだけど、たぶんセンスがないんじゃないかな(笑)。

当面の目標は「大会総合B」

綺麗さ、質の良さを最重視で

―全日本の区分総合で壮魚まで来たわけですが、次の目標は何でしょうか。

平沢 今回の若鯉は、大会総合Bを本当に取りたかったんです。以前、姫路城大賞(⑯/第35回全国若鯉)を取ったことはあるんですけど、あのときは桜椿牡丹の大賞の中から最後に選んで決めたじゃないですか。でも、今の大会総合Bって最初に選びますから。

―じゃあ、まずはそこが目標になりますね。

平沢 桃太郎の大ちゃん(前田大輔さん/岡山桃太郎鯉)とは仲間なので、隣り合ってる大会総合と大会総合Bのキャンバスにお互いの魚が入ったらお祝いをしようって言ってたんですけど、今年は俺ができなかったから。大ちゃんは俺のことを弟だって言ってくれるし、会長(前田道夫さん)にもすごく良くしてもらっているんです。

D…九紋竜(銀鱗)セット
E…菊水セット(右/メス・左/オス)

F…金昭和セット(右/メス・左/オス)
G…落葉しぐれ(銀鱗)セット(右/メス・左/オス)