―とはいえ販売量で見たらやはり輸出のほうが多いんですか?
瑛士 コロナまでは国内と海外がだいたい半々ぐらいだったんですけど、海外からバイヤーさんが来られなくなったときに、国内のお客さんがかなり増えましたね。ちょうどSNSで発信をしていこうというタイミングで、インスタやグーグルマップでの情報を充実させたり、動画を配信したりしていたことで結果的に国内のお客さんが増えて、コロナが明けた今でも国内のほうが多いという状況です。多い時は週に5人以上の新規のお客さんが来てくれるので、錦鯉を始める人って意外と多いというのは実感としてあります。
―国内愛好家が減っていると言われていますが、掘り下げてみるとまだまだたくさんの愛好家さんがいるわけですね。
瑛士 そうですね。高齢化でやめられる方がいる一方で、それ以上に始められる方がいるという印象ではあります。県内には10件くらい鯉屋さんがありますけど、動画で顔が出ているとかこういった場所にあるとか、情報がちょっとでもあれば丸筑に行ってみようとなるのでないかと思います。飯屋を探す時と一緒で、情報を調べたりしますよね。
―たしかにそうですね。料理の写真を見たり口コミを見たり。丸筑さんのグーグルの口コミを見ると「居心地が良い」などのコメントが多数ありますね。


様々な動画が楽しめる丸筑魚苑公式ユーチューブチャンネル
丸筑魚苑 -Maruchiku Koi Farm-
健治 私がもともと愛好家だったこともあって、うちはあまり売り出しをしないんです。売り出しをすると「これはいくらです」「あれはいくらです」と、それだけのやり取りになってしまうので、うちではいつでも鯉を売ってますから好きな時に来てくださいと。私は愛好家がゆっくりと話せる場所を作りたかったので、池があるところは全部人が座れるようにしてあるんです。話をすればその人の好みもわかるし、ただ売って買ってだけでは面白くないですから。
―なるほど。売り出しだとバタバタしてゆっくりとコミュニケーションが取りにくいですからね。
健治 まあ、それが好きな人もいるので、正月には売り出しをやったりもします。
―売り出しは年間でどれぐらいやられるんですか?
瑛士 お正月の2日と3日は毎年やっていますけど、それ以外に秋に1回やるかやらないかぐらいです。お客さんがゆっくりできるように、鯉を選んでもらうハウスとご飯を食べるハウスをそれぞれ分けたりして。
―生産者でありながら愛好家目線でも物事を見ているわけですか。
瑛士 愛好家だった親父もそうですけど、自分も最初からプロだとは思っていないというか。
―ほう。
瑛士 親父の説明は結構玄人向けだったりすることが多くて、「この愛好家さんはたぶん言っていることわかっていないんだろうな」というのは子供ながら感じていたし、それを母親がフォローするところも見ていたので。今でも親父はそういったところがあるので、僕がフォローして話をしたりしています。
―健治さんと瑛士さん2人いることで、それぞれのレベルにあったアドバイスをしてくれるわけですね。
瑛士 意識してそうなったというよりかは、そういった考えが最初からあったというか。話してみないと相手がどれだけ錦鯉について知っているかわかりませんから、愛好家目線というのは気をつけるようにしています。どうしても職人気質の人が多い業界なので、柔軟に対応できるように。
