泉水飼育に挑戦も難しさ実感

時代変化に合わせた販売手法へ

―近年は泉水飼育にも力を入れられているそうで、何かきっかけがあったんですか?

玉浦 当時は野池に入れられなかった鯉をハウスに泳がせている程度でしたが、本気で取り組み始めたのは去年、今年ぐらいです。やっぱり異常気象の時代ですから、泉水のほうが安定するかと思いまして。だけど思うように食べてくれません(笑)。

―長年生産に取り組んできたなかで、様々なことが変わってきていると思いますが。

日出美 ここ10年でいろいろなことが変わりましたけど、最近はすごい短いスパンで変わっていきますよね。私が嫁に来た25年ぐらい前は、台湾の人とインドネシアの人が来るぐらいでしたけど、今は8割以上が外人さんですからね。

―玉浦養魚場は基本的に卸での販売のみですか?

玉浦 ほぼ卸ですね。昔から来てくれている愛好家さんには少しだけ販売もしますけど、そんなに多くはないですよ。

日出美 うちは愛想が悪くて有名なんですよ(笑)。それに3人でやっているから、そういった販売に時間が取れないんですよね。上手に相手もできないし、必ず買ってくれるわけでもないですし……。

玉浦 そうそう、何時間も見て帰る人がいるともう……(笑)。

日出美 だからお客さんには申し訳ないけど「生産・卸」ということにさせてもらっています。

―販売のメインとなる2歳3歳との本数は増えているんですか?

玉浦 15年ぐらい前は2歳で1500本ぐらい立てていたけど、今は450〜500本ぐらいなので、本数で言えば減ってきています。

⑪/第33回錦鯉全国若鯉品評会 幼魚の部総合優勝 23部大正三色/Sugiarto Kurniawan
取扱/成田養魚園㈱ 取次/Samurai Koi Centre

―バイヤーはより高品質を求めるようになったと。

玉浦 基本は質の高いものを立てるわけですけど、今まではそれに達しない質の低いものまで需要があったから売れていましたけど、徐々に売りにくくなってきましたよね。

―販売の仕方が変わったりとかはありますか?

玉浦 何年か前はお客さんを待っていましたが、今はこっちからこういった鯉がいますと、業者さんにオファーするようになりました。それはやっぱりコロナがきっかけで。

國則 あれでガラッと変わりましたよ。実際海外から来れなくなったわけですから。

玉浦 あそこのタイミングから積極的にするようになりましたね。それが今では良い方向に働いていますし、ちょうどいい具合に輸出業者のYume Koi Japan㈱のマイクさんが近くの世羅町に新たに来てくれたものですから、外国に発信してくれたりして。

―そういった業者さんが増えることで販路が拡大するわけですよね。

玉浦 一番上のグレードは誰だって欲しがるわけだから、待ってても売れるんだけど、その下はこっちから発信していかないと売れにくい状況になりました。

日出美 15年ぐらい前は下の鯉でもヨーロッパとかに出せていたんですけど、リーマンショックでガクッと落ちて……。そのとき他の業者は中国へいっていたんですけど、うちは大乗り遅れで入る隙間が無かったから、代わりとなる新たな売り先を見つけなければいけなくて、あのときはしんどかったですよ。

―当時は2歳でも1500本作っていたわけですよね。

玉浦 そうですね。しかもそれなりの金額で売れていたので。それが売れなくなって在庫がいっぱいいるわけですよ。

日出美 その時に成田さんに「どうにもならないから買ってくれませんか」とお願いしたりして。

玉浦 成田さんは当時からライブ鯉をやっていたので、それでその翌年から、うち単独でライブ鯉もやってもらえるようになって。病気で困っている時もそうでしたけど、鯉を売るとか売らないだけではなくて、一番ひどいときでも成田さんやオダカンさんには、いろいろな面で助けてもらいました。

―それは先ほどおっしゃっていた、流通業者があって生産者があるということにも繋がるわけですね。

玉浦 長くやっていればみんないろいろありますよね。いいときばかりではないですから。コツコツと続けることが大事です。

―42年愚直に取り組んできたからこそ、今の活躍があるのではないでしょうか。

日出美 例え50年やってもできない人がいるなかで、これは本当に運が良かったと私は思います。いろいろな人に恵まれて。

國則 派手な文章にはならないけど、「コツコツ」の一言に尽きると思います。

日出美 この人は目立つのが好きではないから地味にね(笑)。

―一歩引いたポジションで。

玉浦 だってこの業界、出る杭は打たれるので(笑)。あまり目立ってしまうと風当たりがきつくなってしまうから、おとなしくしておけばいいんです(笑)。目立つのは鯉だけでいいんです。

 どんどん新たな目標みたいのができてくるから、年をとっている場合ではないですよね。これからは泉水飼育のほうを、もっとうまいことやらなければいけませんので……。

―11月22日㈮から成田養魚園㈱のライブ鯉「ピチピチ玉浦フェスタ2024」が開催されるそうで、ぜひ多くの方に見てもらいたいですね。本日はありがとうございました。