―多年魚の立て池については?

玉浦 昨年から泉水飼育もやるようになったので、今年は少し減らして6面でやっています。泉水で飼育できるものならそれに越したことはないですが、何年かそれをやり続けないとよくわからないところも多いし、なかなか思うようにいかない点もありますよね。

―玉浦さんは当歳をあまり売らないと聞きましたが、2歳をメインに販売しているんですか。

玉浦 そうですね。うちは基本的に当歳は販売しないので、2歳3歳がメインになります。

―それは成長を見たいから?

玉浦 まあそうですかね。それにうちはあくまで販売用のセットではなくて、全部立てられるつもりで残していますので。なかには立てないというか、立たない鯉もいっぱいいるけど、そのつもりでは作っています。

―最近は中羽の売れ行きが悪いと聞きますが、やはりそういった状況も加味して?

玉浦 それもありますし、ハウスに入るキャパが決まっているので、あまり余計なものまで残す余裕がないというのが大きいですかね。

―立て鯉だと春先までに野池に放せるサイズにしなくてはいけませんよね。

玉浦 7月23日の三毛作目に採ったものだと今は小さいですけど、頑張って春までには大きくさせます。たまにどうしてもそこまでに間に合わない鯉もいるので、そういったのはハウスで2歳立てをしますが、今年の場合はそこまで多くなかったですね。

―最後に採ったものだと成長にかけられる時間があまりないわけですよね。

玉浦 ですので一回目の選別を早くしなきゃいけないんですよね。なんというか「それらしい鯉」というのを広めに拾って、10日から2週間ぐらいを目安にすぐに2回目の選別して。そうやって数を減らしていかないと短期間で太らせることはできないので。

―なるほど。

玉浦 今年の当歳はもうかなりハウスに取り込みましたよ。サイズ的にはまだちっちゃいですけど。

―それは一毛作目のを?

玉浦 一毛作目と二毛作目も。

國則 それと三毛作目の前半も。

―9月の初旬でそこまで上げてしまうと、逆に野池が空きませんか?

玉浦 それはもういいんです(笑)。やっぱり大きくなればいいという問題でもないので。急激に伸ばすと模様までなくなってしまうので(笑)。

國則 だからこの時期でもハウスは稚魚で目一杯ですよ。

―9月ぐらいだとどこの生産者も稚魚池がいっぱいかと思っていましたが、そうではないわけですね。

玉浦 あげてない人は全然上げてなかったりもしますよね。サイズ的には外で飼ったほうがでかくなるんだけど、大きいのばっかり作ってもね。それに選別が遅れたりすると紅が飛んで、ほとんどべっ甲じゃないのということもあるので(笑)。

―そういったことが今までに。

玉浦 あるある。よくあることです。

國則 ですから日程が決まっていても、社長が「そろそろ選別をしなければやばい」と言えば、それを変更して前倒しでやったりもします。

―べっ甲になりやすいのは二次選別から三次選別のタイミングで?

玉浦 うちの場合はそうですね。よそだったら一次から二次のタイミングかもしれないけど、うちの場合は二次選別時でも一次のがひと回り大きくなったぐらい小さいので。

―早めにハウスに上げてじっくり飼うことで、そういったリスクを減らしながらも飼育ができると。

玉浦 やっぱり外のようには太らないですけどね。眠り病でもハウスだと意識的にかけないとかからないんですよ。

野池からあげてハウスで飼育している紅白と大正三色の当歳魚

―眠り病は自然にかかるものではないんですか。

玉浦 泥池から新しい池に入れれば普通はかかるはずなんだけど、うちは全然かからないんです。なので、全て上げてきたタイミングで一斉に眠りにかけるんですよ。今年はそれを10月10日ぐらいに。

日出美 うちは國則くんがスケジュールを管理していて、ずっと先まで予定が決まっているんです。

玉浦 綿密なスケジュールがね(笑)。

―どのようにして一斉にかけるんですか?

玉浦 前の年の中羽を取っておいて、それで眠り病のタネを作って一斉にわっとかけるんです。

―そうするとすんなりかかるものですか?

玉浦 そうですね。だいたい2日から3日で。それで10日から2週間かけて回復させていって、その後に選別して販売みたいな感じです。

國則 うちはがっつり眠らせて、しっかりかけることを大事にしています。

玉浦 昔はうちの鯉は弱い弱いと言われてね……。ノイローゼになりそうになったこともあったんですよ。

―それはどういった理由から?

日出美 「玉浦病」と言われてね。

玉浦 25、6年前は眠り病への理解もそうだし、それにかけなければいけないという感覚が、そこまでなかったわけです。ほんとうにすごかったんですから……。

―当時はかけてない人も結構いたわけですか?

玉浦 かけるというよりかは自然にかかるというか、多年魚と混ぜたりすれば自然にかかっていたんですよね。

日出美 当時はちょうど穴あき病が流行っていたので、とにかく他の鯉と混ぜないとか、そういったことにものすごく神経を使っていたから、うちの魚は菌に弱くて。実際、メインの販売池でも魚が眠っているんですよ。

玉浦 それが今度、よそのところに行った際に他の鯉と混ざるから、もっと調子が悪くなるし。そういったときって、売るのも怖いんですよね。

―確かにそうですよね。

日出美 そういった状況で、成田さんやオダカンさんたちがすごく助けてくれて。

玉浦 「こうやったら良いんじゃないの、ああやったら良いんじゃない」とアドバイスをくれて。ほんとうにありがたかったですよ。弱い弱いと言われているなかでも、うちで買った鯉をずっと飼い続けてくれたりして。みんなに助けてもらってここまでやってこれてます。