ブリーダーズインタビュー

㈲松江錦鯉センター 飯塚敬浩さん・裕晃さん(島根)

目指すは「新しい松江紅白」

まだ見ぬ景色に向かって〈前編〉

 「仙助」という系統名は、松江錦鯉センターの代名詞として大きな存在であり続けてきた。しかし近年は、飯塚敬浩社長、裕晃専務を中心に、その枠にとどまらない鯉作りを進めている。目指すのは唯一無二の「松江紅白」だ。

 全国レベルでの実績を積み上げていく中で、7〜8年前に親鯉のラインナップを一新。より高く設定した目標の頂点は全日本のトップだ。「可能性がある限り、そこが最大の目標」と話す裕晃専務。特に近年は自家産の親鯉比率を高め、本気でチャンピオンを取りにいくための環境が整いつつある。2008年12月号以来となる16年ぶりのインタビューは、「松江紅白」にかける熱い想いが端々に感じられるものだった。(取材/8月24日)

自家産の親鯉増やしベース作り

品質向上へ思い切った展開も

―ずいぶん市街地に養鯉場があるんですね。目の前が国道(9号線)で高速道路(山陰自動車道)のインターもすぐで。

飯塚敬 ここに出てきたときは、田んぼの中にポツンとあるような感じでしたよ。

―稚魚池は少し離れたところにあるんですか。

飯塚敬 ハウスから5分くらいのところです。この時間(午前9時)には選別はもう半分終わってます。夏は暑いから早い時間から始めて、午前中にだいたい終わらせて、午後は網を引かないようにしています。午後は場内の仕事をするんですけど、もうタタキに上げている当歳もいます(8月24日)。それを選別して中羽を出していったらスペースが空くから、残りをまた上げてくるんです。紅白の稚魚は去年より40万匹くらい多いかな。

―今タタキに上げているのは1回目に採った当歳ですか?

飯塚敬 そうです。それで稚魚池を空けて次の稚魚を入れるから、これから第1選別するのもいます。

―今後ハウス池をさらに増やすことも?

飯塚敬 今の場所でこれ以上広げるのは無理でしょうね。でも年々暑くなるので、そのうち野池では飼えなくなるんじゃないかとも思っていて。だから今当歳を入れているタタキで2歳を飼って、当歳用のハウスを別のところに作らなきゃダメかなとも思っています。

㈲松江錦鯉センター店舗外観。交通量の多い国道9号線に面する。ハウスはA棟〜M棟の計13棟で、うち3棟が当歳用

―気候の変化の影響は今後さらに大きくなるでしょうね。さて、それでは近年の生産と、今年の状況についてうかがいたいと思います。前回2008年の取材のときは、森田仙助(※)の「玉鱗」の子と、自家産の「すずらん」系が二本柱として確立されてきたという話でした。すずらん系からは愛鱗会の全国チャンピオンや、全日本の壮魚総合などが出ています。今もそれらの筋は続いているのですか。

※ 山口県の愛好家・森田和正氏が宮寅養鯉場から持ち帰った仙助メスを使い、1960年代から生産していた。体高があり骨格も良く、伸びやかな体はジャンボになる素質を感じさせたという。