品評会で活躍目立つ銀鱗三色

スタートは銀鱗紅白オス×三色

―ここまではメイン品種である紅白についてお聞きしてきましたが、最近は松江さんの銀鱗が品評会で大活躍しています。

飯塚裕 銀鱗三色ですね。あれは5〜6年前に、格好悪い話ですが稚魚池が空いたから試しにやってみるかというのがスタートです。大日さんの銀鱗紅白のオスの当歳を、社長がオークションで大日さんから買ってきて、使えるサイズになったのでうちの三色を掛けたのが始まり。そうしたらその年にそこそこできちゃって、それなりに販売もできたし、品評会で賞を取るような鯉ができたんです。それが定番になったので、毎年作り続けているわけです。

飯塚敬 オークションで紅白、昭和、銀鱗白写りなど、みんなオスだろうなと思いながら30本くらい買いました。それを立てたら10匹くらいがメスになって、3歳まで飼ったのかな。その中の1匹がその銀鱗紅白のオスだったんです。親鯉候補みたいな感覚で、肌が良いのを持ってきたつもりでした。そのときのオークションで銀鱗紅白が100匹くらい出品されてたけど、その銀鱗が一番ピカピカしてた。銀の吹きも肌も良かったし、格好も良かった。いつか紅白以外の品種を作ることもあるかもしれないと思って、何が起きるかわからないから持っておこうと思ったんです。

―銀鱗は何腹採っているんですか。

飯塚裕 2親です。

―最初の銀鱗紅白のオスはまだ使っているんですか。

飯塚裕 使ってますし、今はその掛け合わせからできた子供も親として使っています。昨日ちょうど選別したところで。

―組み合わせとしては銀鱗紅白に三色を掛けて?

飯塚裕 昨日選別したのは、銀鱗三色に三色を掛けたものです。数がいっぱいできるわけじゃないですけど、どっちもそれなりに銀鱗は乗ってくれます。今年はもう元親の三色は使いませんでした。新しい親に変えようと思って。

―銀鱗三色と普通の三色の両方が出ますよね。それで残すのは?

飯塚裕 どちらも残します。模様が良ければ三色は商品になるので。立てが効く三色の親は別にいて、人工で卵を分けています。三色は全体で残すのは50〜60本くらいですね。普通の三色で立て鯉を作って、もう一方では銀鱗のオスで銀鱗三色を作って。メスは同じで卵を分けているだけ。ただ、今年採った1つは銀鱗だけにしか使いませんでした。体がすごくなる三色を持ってきて銀鱗につけても、たぶんうまくいかない。白地を見て、これならという三色を使います。

―銀鱗ではない三色をメス親に使うことは決めているんですか。

飯塚裕 決めてます。銀鱗同士でも何度かやったんですけど、銀鱗がうまく乗らない。普通の三色を掛けたほうが乗りやすいですね。

―松江さんの銀鱗三色は、墨がツボに入っている鯉が多い印象です。

飯塚裕 賞に入っている鯉がたまたまそういうのが多いんだろうけど、幸い墨はよく乗ってくれます。銀鱗三色は小さいときに売っちゃうもんだから、これ松江さんのですよと言われて「え、そうなんだ」いうことがありますよ。

第3回関西地区幼魚品評会 大会総合優勝
第24回北陸地区総合錦鯉品評会 若鯉総合優勝

四国地区若鯉品評会2023 若鯉総合優勝
第22回東京都支部錦鯉品評会 全体総合優勝

―ここ数年の躍進は目覚ましいものがあります。

飯塚裕 うちが作り始めたら、周りの人たちも銀鱗三色を作るようになっちゃって(笑)。社長が成田さんの展示会に持っていった最初の頃はうちぐらいでしたよ。「どこの鯉だ?」と言われるぐらいで。

 若いときに新潟の人たちから、銀鱗三色は墨が出ないとか銀鱗が乗りにくいと聞かされていました。「ああ、それでみんな銀鱗三色を作らないのか」と思ってたんですけど、池が空いていることだし、じゃあうちでやってみようと。そうしたら初年度からやたら銀鱗が乗っちゃった。

―今はもう一番上が5歳くらいになりますか。

飯塚裕 5歳とか6歳とか。海外では若鯉品評会などでずいぶん賞を取らせてもらっているので、海外受けは結構いいですね。もちろん国内でも、ちょっとした品評会用に注文していただいて。一番上も売れるけど、中間層もわりと。売ったときにはまだ墨が出てなかったのが、3年後くらいに出てきて品評会に出品されたりとか結構あります。そういうことの積み重ねで、近年賞が取れるようになってきているんだと思います。

 ただ、銀鱗三色は普通の三色や紅白と比べたら、成長がすごくゆっくりでデリケートな魚なので、同じ感覚で餌をやるとすぐに壊れちゃう。扱いが難しい魚ではあるんですが、その中でもなんとか大きくなればと思ってやっています。

―泉水で飼うときも銀鱗とそれ以外では分けて?

飯塚裕 そうですね。紅白と一緒の感覚でやっちゃうと負けますよ。同じサイズで野池に入れても、上がってきたときはいくらか小さいです。紅白が2歳63㎝から64㎝で上がってきても、銀鱗三色は55㎝までが精一杯。でもそこから泉水で飼うと、紅白みたいなスピードではないですけどゆっくり伸びて、65部や70部で戦えています。普通はあまり成長が早いと銀鱗の吹きが悪くなるんですが、なんとかキープできています。

―これだけ品評会で活躍すると、もっと作ってほしいという声が上がってくるのでは?

飯塚裕 増やそうと思ったら面積を増やすしかないけど、やっぱりうちは紅白がメインでそれで精一杯だから、銀鱗の腹数をこれ以上増やすことは考えていません。

 銀鱗三色って意外とできないんですよ、出るのは赤三色がほとんどで。模様が良くて墨が乗る銀鱗三色を作るのは本当に大変です。銀鱗を掛けたら子供は全部銀鱗が乗るかというとそれは大きな間違いで、銀鱗の比率はわずかで普通の三色が多いんです。

―以前から銀鱗を作りたかったんですか?

飯塚裕 銀鱗紅白を作りたいという頭はずっとあったんです。今でもチャンスがあればやりたいと思ってるけど、銀鱗紅白のオスを使って最初に採ったのが銀鱗三色だったので。そもそも銀鱗三色があんなに綺麗にできるとは誰も想像してなかったし。

―最初の年から予想外にうまくいったと。

飯塚裕 それが本音です。うまくいっちゃった(笑)。それで賞を取れて引き合いも結構あったので、これは銀鱗三色をやり続けんとダメだねみたいになって。銀鱗紅白に紅白を掛けて、銀鱗紅白を作ろうとしたこともあったんだけど、できたのはほんの数本で。銀鱗紅白は簡単ではなかったですね。