松江紅白ベースに衣にも挑戦
ただしあくまで本流は紅白
―返信していただいた生産者アンケートによると、紅白と銀鱗三色以外に衣を採っているんですね。これはちょっと意外でした。
飯塚裕 衣はまだ2年目です。東京大会で、最近あまり衣が出てないなと感じるようになったのがきっかけで。それで去年やってみたら、素人なものでなかなか思うような衣ができなかったんですが、1年でやめるのはよくないから今年もやりました。ある程度大きくなる衣を作りたいので、メス親は紅白で、オスの衣を掛けています。
―その組み合わせだと、衣の吹きはどうなんですか?
飯塚裕 初年度はあまり思うように吹きませんでした。多少は出るけど……ゆっくりなんですよ。自分たちが想像している衣が最初からバーンとできるんじゃなくて、衣が吹くまでに結構時間がかかりそうなんです。3〜4年かかるんじゃないかな。だから1年目でやめるわけにはいかないから、今年はオスを変えてみました。すでに綺麗に衣が吹いているオスを社長が持ってきたので。
―結果が見えてくるまでは続ける?
飯塚裕 そうですね。衣同士の掛け合わせでは大きくなる鯉ができないと思ったので、まずうちの紅白をベースにしてそれに衣を乗せて、そこでできたもの使って改良していくことを考えています。ただ、面積的には稚魚池1枚か2枚しか使えなくて、毛仔の数は多くても6〜7万ぐらいまでなんですが、その中からちょっとでも良いものができればと思っています。
―オス親の衣はどこの鯉ですか。
飯塚敬 谷さん(谷養魚場)です。野上さんの紅白に、和泉屋さんの衣のオスを掛けて作ったと聞いています。
飯塚裕 メスの紅白はうちの雪蓮の子供です。初年度はうちの別の紅白に衣2本の自然で採ったんですが、今年は人工で。谷さんが作られた衣は藍の吹きが良いんです。
―メス親は松江さんの紅白ということで伸びは良さそうですね。
飯塚裕 伸びるとは思います。初年度産もそこそこ形は良く伸びているので。
―そこに綺麗に衣が出てくれば?
飯塚裕 そうそう。ちょっとでも出ればと思いながら。時間はかかるけど、残していけばある程度出るんじゃないかな。今、大きな衣ってなかなかいませんからね。
―大きくて綺麗な衣は本当に少ないですね。
飯塚裕 目指すところはそこです。そういう方向性も大事かなと思って。
―トータルの生産の内訳としては、9割以上紅白で、あとは銀鱗三色、三色、衣も少し。
飯塚裕 そうですね。三色もちょっとずつやっていこうかなと。立て鯉がほんの数十本にしかならないと思いますけど。
―他の品種の人気が上がってきても、それらを増やして紅白を減らすということはしない?
飯塚裕 それは絶対にないです。紅白のウエイトを増やすことはあっても、他を増やすことは考えていません。
スタッフ増で作業効率アップ
「最高傑作」を超える鯉目指し
―前回の取材時よりスタッフさんがだいぶ増えましたね。
飯塚裕 今は藤崎君、高見君、そして社長の倅が2人(昌大さん、友晟さん)、自分の倅が1人(洸貴さん)。それと今年から、バイトさんに半日に2人ずつ入ってもらうようにしました。今までは3人で網を引いて、自分らが選別という形でやっていたから、多くても3枚から4枚しか上げられなかったのを、バイトさんが入ったことによって半日だけで6枚、7枚ぐらい上げることもあります。今日は7枚、今2回目の選別をかけているので進みが早いです。1回目の選別のときはバイトさんにも手伝ってもらって。今年は特に回転が早かったんです。
―一毛作目は何回まで選別が進んでるんですか。
飯塚裕 3回目までいって、それはもうタタキに上げています。午前中は養殖場(稚魚池)で、午後から店のほうでタタキの選別をするんですけど、それはもう4回目の選別になります。商品と立て鯉を分ける段階に入っています。養殖場ではだいたい3回目の選別までですね。

―一毛作目のサイズは?
飯塚裕 それほど大きくなくて、12〜13㎝です。ハウスがいっぱいあるわけじゃないので、どうしても1池に数を入れるようになりますから。今ようやく産卵が終わって枡が空き始めているので、そっちに中羽を移動できるようになっています。長いスパンで見て、来春までにそれなりのサイズになればというやり方です。まだ半分すら上がってきていないので先は長いですよ。どうやって上げようかというぐらい、今年は生産量が増えているし。どの親もそこそこ内容は良くて、幅広く残せるかなと思ってます。
―それだけ数が多いと、選別も厳しくなる?
飯塚裕 そうですね。4回目になると面を被ったものはみんな捨てるような感じで。中羽でも面と尾止めが切れているものしか残しません。おかげさまでもう注文はちょっとずつ入っているので、その流れに乗っていけばそこそこ捌けるかなと。
―今年の出来もかなり期待できそうですね。宮日出雄賞が松江さんの最高傑作という話でしたけど、総合を目指すとなるとさらにその上を?
飯塚裕 そうですね。あの鯉はうちを支援してくれた多くの人から、本当に良い紅白を作ったなと言ってもらえました。それは自分の大きな財産になっています。だから何とかあれを超える鯉を作ってやろうというのが、今の強い気持ちです。
―今日はすごく熱いお話を聞けました。松江錦鯉センターが目指すもの、信念がきっと読者に伝わると思います。