気候変化で飼育期間伸びた野池
水不足や高温障害とは無縁
―毎年の生産状況について教えてください。
高橋 だいたい黒仔で5万匹ぐらい飼います。それで秋に上げてくるのが1500ぐらいで、その後は店で飼いながら選別していって。今年はあんまり切れなくて、まだ300ぐらい残ってるんですけど。
―それは良い鯉が残ったからですよね。
高橋 そうですね。例年は150ぐらいしか残らないんだけど、今年はなかなか切れなくて300ぐらい。その中でも本当に良いなっていうのも結構いるので、それはこれから野池で立てて。


―産卵はいつ頃ですか?
高橋 6月の2週目ぐらいですね。それで上げてくるのが9月中旬です。
―その時点で何㎝ぐらいですか。
高橋 去年は上げた時点で15㎝あるかないかぐらい。7〜8㎝で上がった綺麗なやつは、全日本の12部で出せるように飼って。野池で選別したり上げてくるときは、いつも「今年はダメだな」って思うぐらい良いのはいないんだけど、11月とか12月になってくると、こんなのいたかなっていうようなのが結構出てくるので、それもまた楽しみです。わりと真っ黒系のを残しておくんですよ、模様のあまり見えないようなのを。そういうのを店に持ってきてから、墨が剥けてきて良くなったりというのが結構多いような気がします。


―春までにどのぐらいの大きさするんですか。
高橋 今年は大きいので30㎝ぐらいですね。4トンに結構込めて飼ってるので、そんなに大きくはできなくて。湯浅さんが10月末に持っていってくれた当歳は、湯浅さんのハウス池で40〜45㎝になってます。少なめに飼って、餌もかなりやってるので。今回の北海道の品評会にも、35部と40部で当歳を7本ぐらい出してもらったんですけど、もうちょっと大きいのもまだいますし。
―親鯉が大日さんなどの系統ということで、大きくなる要素は持っているわけですね。
高橋 そうですね。一番でかいので97㎝になっています。
―腹数は1腹が限界でしょうか?
高橋 お客さんからは、紅白とかも作ったらと言われるんですけど、一人でやってるのでなかなか。ゆくゆくは御三家くらいは採りたいなというのは理想としてあるんですけど、秋に上げてきてから飼うスペースもあまりないので。当歳用は4トンと2トンぐらいしかないから。
―業態としては、以前とはかなり変わって半分生産者のような感じですね。
高橋 良い鯉を仕入れようとするとやっぱり高いですから。とはいえ生産するのも結構経費がかかるから、どうなのかなというのはありますけど、夢はありますね。


―生産は楽しいですか。
高橋 楽しいですね。お客さんも黒仔選別から一緒にやってすごく楽しそうです。
―お店の生簀を使って産卵させるわけですか。
高橋 そうです。それで3日目ぐらいに黒仔選別して、その日のうちに当別の稚魚池に持っていきます。黒選は、以前は普通に黒仔を吸ってたんですけど、最近は黄色いのを吸って黒を残すようにしています。黒仔は3割ぐらいなので黒を取ったほうが早いんですけど、黒仔を吸うとどうしても黄色いのが入ってしまって、それがトビになってしまうんですよね。今は稚魚池では昭和しかいないし、トビも出なくなりました。






―池上げなどもお客さんに手伝ってもらって?
高橋 もちろん。一人じゃできないので本当に助かっています。
―野池の環境がすごく良いそうですね。確か水温が25℃とか?
高橋 真夏の一番高いときで24〜25℃ですね。
―本州以南と比べて夏の天気は安定しているし、沢水は豊富で枯れることがない。近年の猛暑や大雨に悩まされている内地の業者から見れば羨ましい環境だと思います。
高橋 昔は「北海道で野池なんて」ってみんな思ってたでしょうけど、だんだん適してきているのかなという気がします。10年ちょっと前ぐらいからすると、野池に入れている期間が1か月伸びました。入れる時期は以前より少し早いし、上げる時期もちょっと遅くなりました。
―当歳が9月の中旬から下旬、2歳以上が10月2週ぐらいに上げてくるというと、新潟あたりとそれほど変わらないですよね。
高橋 問題は腹数が1腹ということで、ダメなときはもう本当にダメなので、そこはやっぱりリスクというか怖い部分ではあります。
―産卵や孵化がいまいちで、追加でもう1回採ることはあるんですか?
高橋 一昨年は6月に失敗しちゃって、もうダメだなって諦めてたんだけど、8月にもう1回採ったことがあります。そこそこ数は出て、なんとかなったので良かったですけど。
(後編に続く)