そうした数々のイベントを通じて日本文化を深掘りする中で、錦鯉に出会ったという。
 「代表が錦鯉の魅力に感銘を受け、同じ日本文化として親和性があると感じたんです。綺麗なものや美しいものを好むコスプレイヤーの子たちと親和性があり、私自身も錦鯉と関わってみたいという思いから勉強を始めました。
 そうした中で、多くの若い人たちは実物の錦鯉を見たことがなく、庭に池がないと飼えないという認識を持っていることに気づき、これではもったいないと感じました。国魚として日本の文化になっている錦鯉を、違った角度から広めるお手伝いができないか……という思いから参画し、私たちの特性である『コスプレ』を通して、多くの人の目に触れる広告塔のような存在になれればと考えています」

鱗をモチーフにした髪飾り
左右の玉飾りは錦鯉が左から右へ泳ぐ流れをイメージ
紅白をイメージした髪飾り

 同社が初めて錦鯉品評会に参加したのは2023年の第10回国際錦鯉幼魚品評会。それまで縁のなかった錦鯉とコスプレイヤーが交わったことで、新たな世界が創造された瞬間だった。
 「当初は、知り合いの錦鯉オーナーさんが品評会に出品されていて、一緒に行こうと誘ってくださったのがきっかけです。会場にはコスプレイヤーを直接見たことのない方が多く、好意的な反応と戸惑いの両方があり、面白かったです(笑)。一人ひとりがどんどん話しかけてくださり、私たちの存在を知ってもらうと同時に、錦鯉の勉強もさせてもらいました」
 そこから全国大会や地区大会への出演など精力的に活動を続け、昨年夏には振興会東京支部のメンバーに仲間入り。現在では、全日本、関東地区、大江戸錦鯉まつり(東京都支部品評会)などで、設営や撤去といった裏方まで担っている。

第55回全日本総合錦鯉品評会(2025)の表彰式

 「やはり実物に触れる機会が増えるほど錦鯉の魅力を感じられますし、弊社はイベント業も行っているので、準備や撤去には慣れています。ハードな準備を乗り越えて、本番でお客様に楽しんでいただければやっていて楽しいですし、設営するプールの数が多いと聞くと燃えてきます」と朶恵さんは笑う。
 品評会の表彰式に華を添える、なくてはならない存在になりつつあるコスプレイヤーだが、その華やかな衣装はいずれも錦鯉をイメージしたもので、華麗な装飾が目を引く。
 「錦鯉の模様や鱗を表現したりと、コスプレイヤーの子たちもだんだん錦鯉の品種に詳しくなってきています。銀鱗をイメージした装飾や緋写りをイメージした衣装など、それぞれが自分のアイディアで一から作ったり、リメイクしたりしているんです」
 これまで「錦鯉」と「コスプレイヤー」は同じ日本文化でありながら、ほとんど交わることがなかった。しかし、同社の活動を通じて互いが互いを知るきっかけになっていることは本取材が体現している。
 異業種がコラボすることで生まれる相乗効果は大きく、交流を通して互いの日本文化はさらに発展していくだろう。

第41回錦鯉全国若鯉品評会
桜賞/18部A銀鱗/長野 貴浩
作出/㈱廣井養鯉場 取扱/成田養魚園㈱
取次/㈱ONIGIRI Plus

第41回錦鯉全国若鯉品評会
桜賞/15部A銀鱗/長野 貴浩
作出/㈲松江錦鯉センター 取扱/成田養魚園㈱
取次/㈱ONIGIRI Plus