【錦鯉の飼料効率】 

 次の話題として、最近はエサが高くなっているため、より効率的に成長させたいと考えている方が多いかと思います。鯉を大きくするためにどうしたらいいのか。今回は給餌回数の変化で、魚の成長がどう変化するのか検証してみました。
 まず1回目の試験として一度に与える餌の量を一定にし、給餌回数を増やしたときにどうなるのかを調べてみました(㉑)。1回の給餌につき魚体重の1%の餌を与えました。1日1回の給餌の場合はトータルで魚体重の1%、1日5回の給餌の場合はトータルで5%の餌を与えることになります。
 その結果がこちらになります(㉒)。左の縦軸が魚体重で、グラフの上にいくほどよく成長したことになります。上から5回、3回、2回となっていますので、給餌回数が多いほどよく成長しています。これは給餌量が多いため当然の結果といえます。
 ここで飼料効率というものも比較してみました。飼料効率は与えた餌がどれだけ成長に役立ったかを示す割合で、数値が高いほど餌が効率よく身になったことを表しています。餌を3回与えたときが一番高く、1回のときが低くなりました。1日1回の試験区は1回しか与えないため、うまく消化するかと考えましたが消化液がストップすることで、消化のスタートが遅れるのではないかと思われました。逆に餌を与え続けていると消化液も出続けるため、消化が良くなるのではないかと推測しています。

画像㉑
画像㉒

 実験で使った鯉の写真ですが、見た目でもかなり違いがわかると思います(㉓)。2カ月でこれだけの差が出ました。当試験では餌の量が3倍、5倍となっているので、大きくなるのは当たり前と思われるかもしれません。
 次に1日に与えるトータルの給餌量は同じで、与える回数を変えたときに成長がどうなるか調べてみました(㉔)。こちらがその結果となります(㉕)。複数回の場合はあまり成長が変わりませんでしたが、1日1回しか与えないときは最初の試験と同じで、成長が悪くなったことがわかります。飼料効率も1日1回のときはやはり低く、3回、4回あたりが一番高いことがわかりました。
 そこで、もっと回数を増やしたときにどうなるのか、極端な試験も行ってみました。さらに、鯉釣りをするときに大物ほど夜に釣れるという話があり、野生の鯉は夜間でも餌を食べます。そのため夜間にも餌を与えるとどうなるのかも調べてみました。
 1日の給餌量は魚体重の3%で統一し、1日4回では朝7時から夕方の16時までの3時間おきに給餌しました(㉖)。これはわりと一般的な給餌方法かと思います。

画像㉓
画像㉔
画像㉕
画像㉖

 1日6回給餌は朝の開始時間は同じですが、16時の後に19時・22時と給餌を2回追加しました。4回インターバルは機械的に4時間おきに給餌するパターンで、朝4時から8時、12時……24時と6回与えます。2時間インターバルはさらに極端なもので、2時間おきに12回に分けて給餌しました。なお、この試験は8月から10月末にかけて行い、最初は28度〜30度だった水温が9月中旬から低下していってます(㉗)。
 こちらが試験の結果になります(㉘)。2時間インターバルはやや飼料効率と成長が良くなりました。1日6回のところはやたら成長する鯉がいたため、数字が実力よりも高く出てしまった感じはありました。

画像㉗
画像㉘

 この試験で重要なことは、夜間に餌を与えても鯉は食べて成長しているということです。野池の試験でしたので、暑い時期の昼間に餌食いが落ちることがあるかと思います。水温が低くなる夜間に給餌したほうが、よく育つ可能性があるのではないかと考えています。もちろん酸欠にならないというのが大前提ですが、餌を昼間だけ与えるのではなく夜も与えることを選択肢に入れると、鯉をもっと大きく育てられる可能性が広がるのではないかと考えています。
 今回は研究所で調べたことについて発表させていただきました。まだまだわからないことも多いですが、皆さんの飼育に役立つように調べていきたいと考えています。