(株)阪井養魚場のオリジナル飼料
「N-20」が(株)キョーリンより発売
今秋、㈱キョーリンの錦鯉飼料ラインナップに加わった「N-20」。㈱阪井養魚場の専用飼料として開発され、同場で季節を問わず30年以上も使われてきたのは、「嗜好性が高く食いが落ちず、かつ消化吸収に優れる」という近年のトレンドを先取りしていたことにほかならない。
かつては同場から海外にも出荷されていたが、輸出に関するレギュレーションの変更により停止。それでも、熱心なファンが強いラブコールを送り続けたことで正式販売が決定し、憧れの「阪井の餌」を一般愛好家も使えるようになった。
発売を控えた8月下旬、製品のプロモーション動画の撮影現場に同席させていただき、阪井健太郎社長、㈱キョーリンの担当諸氏に話を聞いた。
食べ疲れないオールマイティ餌
「スーパー増体」からの回帰
―はじめに、「N-20」の開発経緯や歴史について教えてください。
阪井 これは正直なところ、私もよくわからないんです(笑)。私は20歳のときにアメリカに留学しまして、22歳で家業を継いだわけですが、アメリカから帰ってきたときにはN-20をすでに使っていましたので、30年以上の歴史があります。父の代からですから、弊社で一番長く使っている餌ということになります。ただ、基本性能やコンセプトはずっと変わっていません。
―N-20にはどのような特徴があるのでしょうか?
阪井 最大の特徴は嗜好性が非常に良く、消化に優れているところです。とてもあっさりしているので、鯉が食べ疲れしないんですね。夏場の育成シーズンから冬の品評会の最終仕上げにまで使えるという、大変オールマイティな餌といえます。
キョーリン N-20は弊社の「ひかり胚芽」がベースになっています。小麦胚芽をふんだんに配合しているので、15℃以上から与えることができます。
阪井 匂いが良くて、他の餌とは全然違います。魚粉特有のツンとした匂いがありません。
キョーリン 魚粉にもいろいろなグレードがありまして、弊社は基本的に人間の食用にもなるようなハイグレードを使用しています。そのあたりの違いが出ている可能性はあります。また、通常の餌にはタンパク質分として魚粉と大豆ミールが入っているのですが、N-20は大豆ミールを減らして魚粉の割合を高めています。嗜好性についてはその部分が大きく影響していると思われます。
―近年は比較的「軽め」の餌で、量を食わせるのがトレンドになっていますが、阪井さんでは30年以上前から取り入れていたんですね。
阪井 実は、一時期は増体をメインにしてN-20を使わないときもあったんです。タンパクが多いほど鯉は太るだろうという考えがあったので、もっと食う餌、もっと太る餌ということで試行錯誤して、「スーパー増体」とか「胚芽増体」とか、とにかく増体増体で。色揚げにも増体を入れていたほどですが、濃すぎてあまり良くなかったんですよ。タンパクも脂質も多くなりますから、油分で水も汚れるし。スーパー増体というのは肉に例えるとロースやカルビみたいなもので、それがずっと続くとやっぱり鯉も疲れるし、夏は食わなかったんです。それで結局N-20に戻しました。いわば原点回帰ですね。トータルバランスを考えるとN-20がベストかなと思います。
―なるほど。人間も夏の暑い時期に脂っこいものばかりだと受け付けなくなりますものね。
阪井 餌についていろいろ調べる中で、「淡水大魚研究会」という、鯉を中心とした大型淡水魚を釣ったり、生態の研究をしているグループが公開している「コイの生態と餌についての考察」がすごく参考になりました。それによると、「小さいうちはタンパクの豊富な餌を好むが、大型になるほど炭水化物の多いあっさりした餌を好むものと考えられる」とあり、やはり濃い餌は良くないんだなと。
―それでN-20がベストという結論に?
阪井 とはいえ、増体をまったく使わないわけではありません。餌の配合は水温によって変えますので、鯉のサイズにもよりますが、24℃ぐらいだったら増体を3割ほど混ぜてやることもあります。

