1年を通じてN-20がベース

水温次第で色揚げや増体も混ぜ

―阪井養魚場さんでのN-20の使い方を教えてください。

阪井 野池に関しては春の餌付けから夏場まで、ほぼN-20をメインで与えています。盛夏はN-20が7割、「咲ひかり」の色揚げが3割という配合で、これは泉水も同じですが、弊社は泉水においては練り餌がメインなので、練り餌に使用するマッシュを同様の割合で使っています。

キョーリン 練り餌用にペレットを弊社で粉砕して、阪井さんに販売させていただいております。

阪井 現在(8月23日)もこの配合で、食いは落ちずにまるまる太っています。夏の飼育は、暑い中でもスランプにならないよう、いかにコンスタントに食べさせるかが非常に重要です。夏に食いのリズムを崩すと、秋口の成長が鈍くなりますので。

 そして仕上げで白地を抜くときもN-20をメインに、咲ひかりの育成を2割ぐらい混ぜて、水温16℃ぐらいまでやっています。

―1年を通じてN-20がベースになっているわけですか。

阪井 そうですね。水温によって比率は変わってきますが、年間で考えると約半分はN-20で、3割が色揚げ、残りの2割が増体という感じです。24℃ぐらいで飼うときは増体も混ぜたりしますが、増体は温度が上がって28℃を超えてくると食べなくなります。

キョーリン 以前は阪井さんだけでなく、錦鯉業界全体が増体に傾倒していました。どこのメーカーさんも、より太る餌、より色が揚がる餌を目指して。そういう時代を経て、今は健康志向ですね。無理せず健康的に大きくするという。

㈱阪井養魚場の稚魚池とハウス群

阪井 あまり濃い餌ばかりだと、内臓に負担がかかりますから、弊社では週2回、土日は餌をストップするんですけど、鯉がヘタる率がだんだん下がってきました。秋の追い込む時期でも土日は餌を止めています。以前は餌を止めるのは週1回だったんですが、もう全然違います。

―2回切ることでサイズに影響したりは?

阪井 それはないです。弊社は年中餌をやりますから、その点を考慮して土日は止めるようにしています。2歳などは秋に60㎝ぐらいで上がって、どんどん食わせてひと冬越して春に75㎝ぐらいになりますし。5歳で90㎝オーバー、6歳で1mにしようと思ったら年中やらなきゃいけないので、土日は止めているんです。

―給餌は1日何回ですか。

阪井 5回です。1回目は朝5時に給餌器でペレットを出して、8時、午後1時、夕方の5時半はそれぞれ練り餌を与え、夜9時にペレットをやって終わりです。

―意外と少ないような……。

阪井 もっと回数が多い方もいると思いますが、練り餌は作るのも、手やりで与えるのも時間がかかるので、あまり多くの回数はできないんです。

―練り餌を作る機械があるわけですか。

阪井 そうです。1日分の餌を作るのに、N-20などのマッシュ25㎏、サツマイモ5㎏、押し麦2升、蜂蜜を6リットルぐらい使います。サツマイモをカットして蒸して、麦は炊いて、それを機械で練ったあと手で捏ねて形を整えるので手間はかかりますね。サツマイモは甘みを出すためにじっくり蒸していますし。

―さらに蜂蜜を……甘さが想像できます(笑)。

阪井 「コイの生態と餌についての考察」によると、鯉は人間よりも甘さに敏感で、大変好むと書いてあるのでそのようにしています。

―その、いわば阪井さんオリジナルの練り餌と、N-20や咲ひかりなどを組み合わせて与えていると。

阪井 泉水はそれで飼育しています。練り餌に使うマッシュは今の時期(8月下旬)はN-20が7割、咲ひかりの色揚げを3割の配合で使っています。

―ちなみに、ペレットの沈下と浮上はどのように使い分けているのですか?

阪井 野池は沈下と浮上が半々で、浮き餌の残し具合を見て量を調整します。泉水は沈下7割に浮上3割ですが、私が管理している大型鯉の池は沈下のみですし、他のハウスももう少し涼しくなって品評会に向けて勝負をかけるようなときは沈下だけです。沈下を食わせたほうが肉が入って、ボリュームの付き方が全然違います。

 ただ、沈下だけで飼っているときにいったん食べなくなると、完全に食いが止まってしまうのでそこが難しいところです。その場合は浮き餌ばかりをやるようにして、安定して食べるようになったらまた沈下の餌を足して、様子を見ながら比率を増やしていきます。

N-20で育てた過去の全日本チャンピオン鯉