㈲AO・あおきや・青木元義氏に聞く
きれいに見える荒鱗を目指して
―全日本に出品された黄竜が優勝という評価がされたことに対しては、どのように感じていますか。
青木 一つの変わり鯉、品種として評価をしていただけたのかなと思います。ある程度認められるきれいさであれば、賞というものはいらないんだろうけど、まだまだ認知されていない品種だから、今回賞をいただいたことで皆さんに知ってもらえるきっかけになったし、こうして取り上げてもらえましたから。

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―評価の基準だったり時代が変わってきたという印象も?
青木 そうですね。特にうちは変わり鯉屋としてやってきたところがあるのでそう感じます。だから誰も見たことのないような鯉を目指して、挑戦していったほうがいいのかなって。うちで紅輝黒竜ができた時も、次にそれを和鯉でできないかを考え、できあがったのが紅銀河でした。この前の若鯉大会に出して、種別を取った銀鱗メタリック五色とかもそうですけど、やっぱりおもしろいし夢がありますよね。
―となると次なる変わり鯉も構想中ですか。
青木 いろいろな品種に挑戦してきて黄色い地体に墨を乗せたいと思い、張り分けに九紋竜とかをかけて何年も取り組んでいるんですけど、黄色と墨は相性が悪くて、なかなかはっきりとしたものが出なくて。
―新たな黄色い品種の誕生が楽しみです。そういえば、黄竜には「キングギドラ」という愛称がありますよね。
青木 成田さん(成田養魚園㈱)がフェイスブックであの鯉をキングギドラと紹介してくれたので、そういった名前で呼んでもらえるようになりました。どれだけその名前が広まっているかわからないけど、俊將君(五十嵐養鯉場)のゴジラとか、そういった愛称とかがあればみなさん想像しやすいのでね。広島の谷口さん(谷口養鯉場)のゴールデンコーンとかも、ちょうど名前がその鯉にぴったりいくようなネーミングで。黒いからゴジラ、黄色いからキングギドラみたいな。すごく自然なネーミングだし、変わり鯉だからイメージのしやすさも大事かなって。
―前編で紹介したように、五十嵐養鯉場も黄竜という名前の鯉を出していますが、お互いに合わせたりも?
青木 特に合わせたというわけではないんですけど、俊將君はたまに遊びに来たりもするので、お互いに荒鱗が流行ったらいいよねみたいな話をしながら、むこうはゴジラで有名になったから、じゃあうちは黄色いからキングギドラ(黄竜)かなという感じで。

23部 変わり/Benedict Campos
取扱/成田養魚園㈱ 取次/Tategoi House
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―お客さんからの反応はいかがでしたか?
青木 品評会で賞を取ったような鯉であればきれいなのでいいんですけど、全部が全部そうではないし、まだまだ新しい品種なのでなんとも……。うちは正統派タイプと荒鱗タイプの2種類を作っていて、やっぱり人によって好みが違いますし、見る人によっては荒鱗は汚いと思う人もいるかも知れません。ですので、そういったイメージからきれいな鯉というように、少しずつ認識を変えていく必要がありますし、そのためにも生産者としてきれいに見える荒鱗鯉を作っていかなければいけないと思います。
―青木さんと言えば紅輝黒竜が有名ですが、今後はそういった品種での荒鱗化も?
青木 そうですね……ただちょっとリスクが高いんですよね。この鯉(写真⑤)のように黄色一色とかであれば、黒い鱗とのコントラストが出て荒鱗自体が模様として生きてきますが、紅輝黒竜となると模様が大事になってくるのでね。模様がよくて荒鱗の並びがいいとなるとなかなか難しいんじゃないかな。それに、荒鱗が模様の邪魔をしてしまうのではないかと。それでも、新たな形の錦鯉として、新しい品種に挑戦していきたいとは思っています。