丸仙小林養鯉場・小林直人氏に聞く

渋くて迫力ある荒鱗黄金落葉を

―様々な変わり鯉が作られる新潟においても荒鱗鯉を作る生産者はまだまだ少ないですが、小林さんがこういった鯉を作るきっかけは何だったんでしょうか。

小林 荒鱗自体は決して狙って作ったわけではないというか、当初は個人的に好きだった黄金落葉を作りたいと思っていて。それで俊將さんが作っている系統を持ってきて、それで和鯉同士をかけてみたんですけど、一次選別のときに網を引いたら和鯉の黄金落葉なんてほんのちょっとしかいなくて、そのかわりにドイツ鯉が多いので何だこれみたいな(笑)。だけどなんとなく面白そうだったから二次、三次選別と気をつけて残すようにしてたら、荒鱗のタイプがたくさんできてしまったと。

―均一に並ぶ荒鱗を見ると、こだわって選別されていることがうかがえます。作り始めたのはいつ頃からですか。

丸仙小林養鯉場の小林直人さん

丸仙小林養鯉場作出の『黄金落葉』

黄金落葉
黄金落葉
黄金落葉

小林 今いる鯉が2歳なので作り始めたのは2年前になりますね。

―落葉系統だと様々なバリエーションが出るわけですか。

小林 バリエーションもそうですが変化もあって、当歳のときはだいたい黒っぽい地体なのでどうしても汚く見えてしまうんですけど、2歳になってそれがむけてくると、オレンジだったり黄色い模様がはっきり見えてくるので、コントラストが出てきれいになるんです。

―国内や海外のお客さんからの反応はいかがでしたか。

小林 当歳では黒っぽいから何この変なのみたいな感じで(笑)。全体で見れば日本人のお客さんはそこまで多くはないんですけど、なかには荒鱗が好きな方がいるのでけっこう買ってくれたりもします。

―一昨年から作り始めたということですが、昨年は親鯉の組み合わせだったり腹数を増やしたりも?

小林 いや全く同じ組み合わせで一腹です。ですが、今年の当歳は全体的により黒っぽいというか、ちょっと雰囲気が違っていて黒すぎる感じもあるけど、これが2歳でどう変化していくかですね。

2022年秋の新潟オークションに出品された2歳のドイツ黄金落葉

黄金落葉の当歳魚

―選別はどういった基準で?

小林 側線に鱗があるのは模様が良ければ残しますけど、中途半端なものは基本的には残さないようにしています。それに、背鱗が一列のものだと普通のドイツ鯉と変わらないので、あんまりきれいすぎるものは外すように。一昨年は、2歳になった時にどうなるかを見たかったので、あえて鱗のがちゃがちゃしているもの、荒れたものを残したんです。それで2歳で立てたときに、鱗の感じがまるで蛇みたいだからびっくりしましたね。

―2歳でどれくらい立てたんですか。

小林 100本ちょっとぐらいで、今残っているのがだいたい20本ぐらいかな。

―以前、㈱仙助さんが販売していたオレンジ色(写真⑥)や黄色(写真⑦)といった、カラフルな荒鱗鯉がいましたがあれも黄金落葉から?

小林 そうですね。オレンジ、黄色、シルバーなど。あおきやさんの黄竜も地体は黄色いですが、その黄色みとはちょっと違って。

―いろんな色の荒鱗鯉が出てくれば、さらなる盛り上がりも期待できそうですが、今後はバリエーションを増やしたりもするんですか。

小林 バリエーションは増やせれば増やしたいんだけど、あれもこれもやってしまうとなかなか難しいのでね。黄金落葉は自分自身好きな品種だったし、丸博さん(㈱丸博養鯉場)や丸誠さん(㈲丸誠養鯉場)が品評会にでっかいのを出しているのを見ていたから、やっぱりすごかったし作ってみたかったんです。

―変わり鯉の中でも特に好みが分かれる荒鱗鯉ですが、小林さんが思う荒鱗の魅力は何でしょうか。

小林 やっぱり派手さがあることでしょうかね。大きな鱗に銀が入れば、普通の鯉とは全く違う派手さになるし、体が大きくなればそれだけ鱗も大きくなるから、すごく迫力が出ると思うんですよね。特に以前仙助さんで販売した鯉(写真⑥⑦)のような無地ものは、銀が吹いていたほうが派手さが増すし、今は黄金落葉系統で作っているので、全体的に色味が地味というか渋いから、できる範囲内でこれからもう少し血を変えたりしながら改良して、明るい色味の鯉も作っていきたい思いはあります。

⑥黄金落葉から出たオレンジ色の荒鱗鯉(写真:㈱仙助)
⑦黄金落葉から出た黄色の荒鱗鯉(写真:㈱仙助)