―使わなくなったのではなく、使えなくなったということですか。
瑛士 そうですね。
―限られる規模の中での稚魚の出来はいかがですか。
健治 昨年は紅白の稚魚の出来がものすごく良くて、今まで作ってきて中で1番でした……と思っていたら、夏場の猛暑の影響で模様が飛んでしまって……。毎年同じやり方で、それまで暑さで模様が飛ぶなんてことはなかったんですけど、昨年はものすごく暑くて、白いのがいっぱい上がってきましたよ(笑)。
―たしかに昨年は異常な猛暑でした。
瑛士 今年はもっと暑かったですけどね。今年のせいで昨年の暑さを忘れるぐらい異常に暑かったです。
健治 ですが、昨年の教訓があったからこそ今年はよくできていると思います。このあたりは地下水が豊富にあるので、稚魚池の水量をだいぶ上げて水温が上がらないようにしたら、なんとか昨年の分は取り返せた感じです(笑)。
―結構深いんですか?
瑛士 稚魚池で使っている池は、もともとうなぎの養殖用として作られた池なので、一番深いところで1・2mぐらいあります。
健治 水深を深くすると水温差ができてしまって、あまりよくないから今までは深くしなかったんですけど、今年は夏の間水を溜められるだけ溜めて、新水もそれなりに入れてなるべく水温が上がらないようにしたらうまくいきましたね。
―健異常気象が当たり前と考えてやらなければいけないわけですね。
健治 以前は野池に親鯉も入れていて、上げてくれば普通に産んでたんですけど、泉水で飼うようになったら大きくなったのはなかなか生まないんですよね。
瑛士 6歳7歳で生ませるよりも、3歳4歳で生ませておいたほうがリスクが減りますよね。調子も崩しにくいですし。見かけはものすごい卵を出しそうな鯉だったとしても、実際に産ませてみないとわからないことがありますし、それで昨年は紅白と昭和で2本失敗してますから。
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75部 紅白/大熊 堅二(福岡)
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55部 紅白/吉田 隆一(東京)
阪井系に松江で良質な紅白を
昭和は右田昭和が相性良し
―2013年のインタビュー時に、紅白は阪井産のメスに自家産のオスを掛けていたそうですが、現在も変わらずに?
健治 今はそれらの鯉の孫をメス親にして、それに松江さんのオスを掛けることが多いですが、桃太郎さんのオスなども使ったりしています。
―松江さんの紅白を選んだポイントは?
健治 やっぱり全国を見ても松江さんはいい紅白を作っていますので。うちもちょっといろいろ大変な時期があって、なかなか親鯉を買えないときがあったりして、何年か前の東京大会で松江さんに買えるかと思って話をしていたんですね。そしたら春頃に電話がかかってきて、松江さんのほうから「来ないんですか」と。そしたらものすごくいい親鯉を分けてくださって、その鯉は昨年死んでしまいましたけど、あれは本当に嬉しかったですね。3年ぐらい仔が採れたのでそれらの鯉を親にしたり、松江さんのメスにうちでできたオスを掛けたりして、今はその2つがうちのメインの系統になっています。
―紅白は品評会で着実に成績を残し、近年ではそれが顕著に現れていると思いますが、親鯉の組み合わせが当たっているといった感じですか。
瑛士 生産する量は少ないものの、生産自体は割とうまくいっていると思います。ですが鯉の持っているポテンシャルを引き出せないと意味がないので、そこはまだまだ勉強中というか試行錯誤しながらやっていますが、鯉自体の素質は良いものができているとは思いますね。

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85部総合優勝/小西 将方(福岡)