ブリーダーズインタビュー 玉浦養魚場 玉浦浩二さん(広島)

墨を効かせた玉浦三色

42年の歩みは「コツコツと…」〈後編〉

 今年で創業55年を迎える広島県三原市の玉浦養魚場は、代名詞とも言える「玉浦三色」をはじめ、紅白や昭和が毎年のように全国大会上位に名を刻んでいる。近年の目覚ましい活躍の裏にはたくさんの苦悩があったというが、そこにはいつでも仲間の存在があったと話す。

 玉浦浩二さんの人柄が表れた、魅力あふれる鯉を紹介していくとともに、長年に渡ってそばで支えてきた日出美夫人と國則勇貴さんを交え、これまでの歩みについて話をうかがった。

明るい紅と体型改良に紅白を

玉浦色の魅力ある三色を目指し

―当時の記事には、大正三色は松之助と阪井系統からスタートされて、そこに大日の定蔵系が入ったと。

玉浦 これ(写真④)は当時から良いのが出ていたので、30年ぐらい親として使っていました。一度だめになったんだけど復活してね。その間オスも変わりましたけど、このオス(写真⑤)としばらくはやっていました。

―親鯉として30年も使えるのはめずらしいですよね。

玉浦 その鯉は特別でしたよ。普通は鯉の流行りも変わってくるので、せいぜい10年か15年とかでしょう。

―それを考えると、かなり活躍してくれたわけですね。

玉浦 そうそう。それとその子供が。

―第30回広島農業祭(1993年)で全体総合優勝次席を取られた三色(写真⑥)は、写真④と⑤の組み合わせから?

玉浦 1年目と2年目はこのメス(写真④)に別のオスを掛けていたんですけど、3年目にこのオス(写真⑤)を使ったことでガラッと変わったんですよね。中羽まで良くなってくれて。2歳中羽のようなものでもどんどん良くなったし、すごく勢いのある鯉でした。

 当時、三色といえば松之助でしたから、毎年のようにオスでもメスでも買っていました。ある年、持って帰ってきた鯉がすぐ死んでしまったことがあって、松之助の親父に「次の年は良いのを回してくれ」と。そしたら、山の池に何年も投げている鯉がいるからそれを持っていけということで、次の年に引き上げたのがこのオス(写真⑤)だったんですが、げっそり痩せこけて、まるでナマズみたいな形で。だけどこれがいい感じの鯉でして、墨は別として明るい紅をもっていました。

―痩せてはいますが、頭の大きさから骨格の良さがうかがえますね。

玉浦 この組み合わせで何年か採ったんですが、生まなくなってしまって。だいたい5月の一毛作目に使っていたんだけど、生まなくなってから何年間かは使わずに、しばらくして試しに二毛作で使ってみたら復活したから、これは産卵が早いとだめなのかと。それからまた何年かやって、そのうちオスがだめになってしまいました。

④/メス親 大日産の定蔵系統
⑤/松之助のオス親
⑥/第30回広島県錦鯉品評会(1993) 全体総合優勝次席(水産庁長官賞)70部
画像④と⑤から作出

―掛け合わせをする上で親子掛けをしたりもするんですか?

玉浦 親子ではしないです。一回だけ親鯉を作るのに、兄弟がけをしたことはありますけど、これもそんなに頻繁にやることではないです。

―血が濃くなれば弊害も多くなりますからね。

玉浦 逆に薄ければいいというものでもないような感じもしますが。

―系統としての特色が出にくくなるわけですか。

玉浦 やっぱりそうなりますよね。その血を残しつつも、違うものを掛けないと。あんまり薄いと特徴がわからないから変わったものになりますし、自分で選別していてもわからなくなりますから。

―他の系統を定期的に入れたりも?

玉浦 だいたいはオスですけど、入れるようにはしています。メスはたまたまイベントとかで買った2歳魚を、2、3年大きくさせてから使うこともあります。だけど今は、三色に関してはメスは全部自分のところの系統で、そこによそのオスを使うことが多いです。

―本命腹とか試し腹とか様々な組み合わせがあると思いますが、本命には自家産同士とかで?

玉浦 自分のところのでも、よそのと掛けてできたのとかを使っています。どれが本命って難しいですよね。この腹からは何本か良いのが出たけど、こっちの腹のほうがいっぱい出た。だけど賞には入っていないとか、いろいろありますからね。

―出来のいい組み合わせは基本的に毎年同じですか。それとも変えることが多い?

玉浦 んー変えるのもあるし、同じのもあるから、絶対に変える変えないというのはないです。だけどある程度良ければ、あれもこれも変えたりはしません。こっちのほうが良いだろうと思ってやっても大概は悪くなるので、ある程度出方がわかるものに別のをかけたり、新しい親で作るというか。何年も採れるというわけでもないから、どんどん新しい親を探していかないとだめです。

 系統的にはこれとこれ(写真④・⑤)がずっと長いこと続いてきたんですけど、松之助系統なので細い細いと言われてね。とにかく細い細い細い細い………(笑)。質がどれだけ良くても細いと。そのころ阪井さんがビッグローズとかシャイニングローズとか、体型のいい鯉をどんどん作り出していましたから。

第54回全日本総合錦鯉品評会(2024) 15部雅賞 大正三色/赵 一明
取扱/成田養魚園㈱ 取次/㈲I.K.E