「紅九紋竜はアートの世界」

予測難しいが、化ける楽しさも

―紅九紋竜はどういった基準で選別していくんですか。

谷 一次選別では真っ白と真っ赤、頭に紅がない坊主だったり黄土色っぽいものは捨てて、写真④のようなものを残していきます。二次選別した一部が写真⑤です。

―秋上がりのサイズはやはり小さく?

谷 そうですね。秋の時点ではそこまで大きくしないので、だいたい10㎝ぐらいで3000尾ほど上げてきて、最初は狭いハウスで飼い、5月頃に選別して野池に入れるもの、大きな泉水池で飼うものと分けていきます。こういった品種は、泉水飼育のほうが紅の色もきれいに上がってきますので、今年は泉水にも力を入れていて、28トンの立て池に20㎝ぐらいのを215本入れて飼っています。

第54回全日本総合錦鯉品評会/75部九紋竜 準優勝 Jason Garner(アメリカ) 4歳メス

―生産する上で難しい点は?
谷 やっぱり墨の変化の予測がつかないことですね。昭和などの墨ものであれば、影墨でだいたいわかりますが、九紋竜は真っ白なところからすごい墨が出てきたりもするので。

―そうすると、何を残していいのかわからなくなりそうですが。

谷 そうですね。なのでかなりたくさん残しています。それに完成するまで時間がかかるので、ストックできる池がたくさんないとできないと思います。1年経っても真っ白なものがいたり、いつ出るかわからないから捨てるに捨てられないんです。

手びれの先まで色づいた赤い地体の紅九紋竜
第54回全日本総合錦鯉品評会 優勝
15部九紋竜/Benedict Campos

―裏を返せば変化をより楽しめる品種と言えますよね。

谷 墨の出方次第では、中羽だったものが品評会レベルのものに化けたりもしますし、緋模様が軽くても白地が良ければ、そこに墨が入ったら印象はガラッと変わります。墨が出てしまえばどうにかなるというか、紅九紋竜は紅九紋竜になるので(笑)。

―紅九紋竜の魅力はどんなところにありますか。

谷 やっぱり派手さではないですかね。紅九紋竜はアートだと思いますすよ。和鯉に比べて模様が鮮やかでシャープですし、墨のインパクトもあって。

―紅九紋竜は白地に黒と赤が入るものと、全身が赤い地体で墨が入る2タイプに大きく分けられると思いますが、どちらも残すように?。

谷 そうですね。品評会では白地があったほうが強いかなと思うんだけど、全身が赤いタイプも墨が出れば結構需要はあります。そこらへんは好みだから、品評会でも審査員によって変わるかもしれないし、それぞれ魅力がありますよね。

二次選別(2023年9月5日)
一次選別(2023年8月11日)

泉水で飼育している立て鯉(2024年6月4日)
池上げされた当歳魚(2023年10月)

―紅九紋竜はいくらぐらいから購入できますか。

谷 時期によっては500円から販売しています。紅九紋竜は化けるので、500円でもわからないです。

―毎年、ホームページで自社オークションを開催していますがそちらでの販売も?

谷 そうですね。だいたい10月後半から11月ぐらいの品評会前に開催しているので、お探しの方はぜひチェックしてみてください。

―選別でお忙しいなかありがとうございました。今年の紅九紋竜の出来も楽しみにしています。

第10回国際錦鯉幼魚品評会 ゴールドプライズ 18部九紋竜/Benedict Campos
第10回国際錦鯉幼魚品評会 ゴールドプライズ 21部九紋竜/Ben Smit
第54回全日本総合錦鯉品評会 優勝/12部九紋竜 Benedict Campos

谷養魚場の販売所
総水量700トン以上を誇るハウス池