「立て鯉の感動を感じてほしい」

愛好家と一緒に楽しめる場を

―今では「昭和三色を楽しむ会」になくてはならない五十嵐さんの昭和三色ですが、髙岡さんはいつから扱うようになったんですか。
髙岡 「昭和三色を楽しむ会」を開催する15年ぐらい前です。幸太さんから鯉を分けていただくようになって、当歳で分けてもらった鯉はすべて横須賀へ連れ帰っていました。ある時2歳の池上げのお手伝いの際に分けていただいた鯉を、野池で育ててもらうことになったんですが、初めて自分の鯉で「立て鯉の楽しさ」を体感した瞬間でもありました。
 ただ、分けていただいた鯉は6歳上がりの池上げの時に、体調を崩したのか上がってきませんでした⋯⋯。
―野池はどうしてもそういったリスクがありますからね。
髙岡 やっぱり生き物だから仕方がないんですが、何より6年間幸太さんと「ああでもない、こうでもない」と鯉談義をした時間は、何事にも代えがたいものでした。上がってきた先輩方の大切な鯉を見ながら、二人で「次は違うタイプの鯉を選ぼう」と(笑)
―そういった経験をしたからこそ今があるわけで。
髙岡 当時、15歳や20歳を超える鯉をたくさん見せていただき、「墨が早く出る流れ」「数年かけて墨が出てくる流れ」など、そういった変化を自分なりに解釈していくうち、「柿右衛門」(写真②)と出会いました。
―本誌2023年9月号の表紙を飾った昭和三色ですね。個性的な鯉でしたよね。
髙岡 今から遡ること10年前の11月頃だったか、たくさんの当歳の中からこの鯉を見つけ出して、とっさに幸太さんに「僕これが好きです。最高です。分けてください」とお願いをしたんですが、その時は「鯉がかわいそう。横須賀には行きたがっていない」とのことでダメでした(笑)。それで、秋の2歳上がりで再び見て、先輩に頭を下げて無事にゲットすることができました。
 当歳から2歳にかけて自然と模様が整い、2歳から3歳では尾筒になかった緋が4歳あたりから出てきましたが、「成長とともに一つの模様になる」と思ったので気にせずに、6歳を迎えた頃には完全な紅となりました。やがて7歳、8歳、9歳と、墨がじわじわ浮き出てくる姿を目の当たりにして、立て鯉ってこんなに楽しいんだと実感しました。
――そこで立て鯉の魅力にはまってしまったわけですね。
髙岡 こんなにも楽しくて、こんなにも美しい昭和三色を誰も知らないなんてもったいないと幸太さんにお願いして、そこから本格的に仕入れさせていただくようになりました。
 秋には、興味を持ってくださったお客様に2歳上がりを見ていただき、1年お預かりした後、翌年上がってきた姿を見てもらったんですが、みんなニコニコでまるで少年のような顔に戻る姿を見て、「何かイベントができたらいいな」と思うようになりました。
―そこから「昭和三色を楽しむ会」がスタートしていったわけですか。
髙岡 幸太さんとそんな話をずっとしていたんですけど、当時は野池が埋まっていたのですぐにはできなかったんです。池が使えるようになった時に、幸太さんからそういったものをやってみても面白いんじゃないかと言ってくださり、それで始めました。
―髙岡さんが鯉を選ぶ時のポイントを教えて下さい。
髙岡 鯉を選ぶときはとにかく良い魚をたくさん見て、幸太さんに「お前にはダメ」と言われた鯉の成長を観察しながら、そういった鯉に近いものを選ぶようにしています。
 「模様が良くても、質が伴わなければ長持ちしない」そんなことを学びながら(笑)。
―昭和にベタ惚れですね(笑)

当歳

2歳
4歳
8歳

②/2023年9月号の表紙を飾った愛称「柿右衛門」。10歳82㎝

髙岡 「あの時の大日さんの『さくら』とかに似ている」と、昔の雑誌を引っ張り出して先輩に見てもらった時に、「お前は顔は悪いけど、錦鯉偏差値だけは高いよな」と、初めて褒めてもらえたことが、大きな自信につながっています。
 そんなこんなで、やっぱり昭和三色が大好きですね。なにしろ軽トラックを昭和三色柄に塗装した走りですから(笑)
五十嵐 そんなのやろうとは普通思わないよね(笑)
髙岡 他の業者さんでは野池から上がってきた鯉を、品評会形式で優劣をつけることが多いですが、「昭和三色を楽しむ会」は上がってきた鯉をお客さん同士で見ていただいて、「ここが良くなったね」みたいな感じで、立て鯉の変化や成長の感動、面白さなど、単純に鯉を楽しんでもらいたいという思いの中で始めたんです。
 もちろん鯉は生き物ですから全てが良くなる訳ではないですが、しっかりした筋の親鯉を使っていれば自然と長持ちしますし、残っていくのではないかと考えています。
―野池から上がってきた鯉の変化や質感、仕上がりを見て楽しめるのは格別ですよね。
髙岡 最近は「模様が良くないと駄目」「メスじゃなきゃ駄目」「大きくならないから駄目」とよく言われますが、飼育環境次第ではオスのほうが体型が崩れにくく、きれいに仕上がることもあります。ですのでオスメス関係なく、良いと思った鯉を仕入れるようにしています。ただ、そういった鯉に対して「模様が悪いから安い」と思われる人も増えてきたように感じます。
 結局、鯉って正直な生き物なので、小細工しても元に戻ろうとします。なかなかわかってもらえないことが多いですが、昔から純粋に楽しんでいた人たちの刺激になって、心に刺さってくれるだけで満足です。鯉が好きでこの仕事をしている人間ですから。
―髙岡さんの鯉への思いがひしひしと伝わってきます。
髙岡 幸太さんをはじめ大山さんや正井さん、加知さんなど、諸先輩方が扱っている鯉ってすごく綺麗なんですよね。肌が真っ白で銀粉が散りばめられたような陶器みたいな感じの肌をしていて。
五十嵐 今はキワとかサシがいいねではなく、模様がいいねしか言わないじゃない。そことの方向性はだいぶ違うと思います。今の鯉業界に物足りなさを感じている人が、少なからずいるんじゃないかと思うんですよね。そういった人たちに「ここには変な鯉がいるね」みたいな、見られ方をされればいいんじゃないかと思います。
髙岡 「なんか懐かしいね」みたいにね。差別化というかみんなと一緒のことをしても何も面白くないから、誰もやらないようなことをしつつ、お客さんと楽しめたらいいなと思っています。自分らも「この鯉がこうなるの」みたいに、一緒に勉強できますから。
五十嵐 今の主流や流行の逆を行く人は一定数いると思うし、絶対なくならないと思うからそこをターゲットに⋯⋯たぶんそれはどこの業界でもありますよね。
 結局、商売って提供しているものが、自分がお客さんになった時に欲しいか欲しくないかということで、それが一番大事な気がします。
髙岡 それに、間違った美意識が刷り込まれ、錦鯉という素晴らしい伝統文化が衰退してしまうのは悲しいし、美しさという捉えようのない『感覚の世界』だからこそ、本当に美しいものが正しくジャッジされるよう努力し続ける必要があると思っています。
―なるほど。では最後に第5回昭和三色を楽しむ会の開催について一言お願いします。
髙岡 今年で第5回を迎える事ができ、いつも応援してくださる皆さんありがとうございます。今回も太陽光の下でキラキラしたナチュラルビューティーな昭和三色にご期待下さい。
―秋の池上げが楽しみですね。10回、20回と続いていくことを期待しています。ありがとうございました。

2022年10月に行われた「第1回昭和三色を楽しむ会」お披露目会
「昭和三色を楽しむ会」で販売する鯉を入念に確認する髙岡さん