全日本総合錦鯉品評会50有余年の歴史から
後世に語り継ぎたい銘鯉 紅白編
文/児島徳昭(茶の美)
全日本錦鯉振興会の総合錦鯉品評会は、50年以上の長きにわたり今日まで開催されてきました。その間に、幾多の美しい錦鯉が多くの人々の記憶に刻まれ、心を満たしてきたことは改めて記すまでもありません。
その数え切れぬほどの美鯉たちの中で、時を経た今日でも、目にした人の脳裏に焼きついて離れない、突出した美を持つ銘鯉と呼ぶべき鯉がいます。品評会という晴れの舞台で輝いた、それぞれの時代を代表する鯉を、シリーズで品種別に取り上げたいと思います。

楼蘭(ローラン)の呼び名で世に知られたこの紅白は、全日本錦鯉振興会50年の歴史の中で、初めて、第22回大会(1990)と第24回大会(1992)の2大会で総合優勝を獲得した銘鯉中の銘鯉。
鮮やかな紅に雪のような白い肌は「紅白の夢」と評され、作出者はまたこの鯉の柔らかみのある優しい白地を、柿右衛門の濁手にも喩えた。
■作出者/小川養魚場・小川平吉(長崎県佐世保市)
■出品者/橋本孝仁(兵庫)

頭部から目の下へと下がった模様が舞う蝶のように見えたことから、夜の蝶(よるのちょう)の愛称がついた。
今を遡ること35年以上前、ユニークな個性あふれる模様や、紅の鮮やかさに多くの錦鯉関係者が魅了され、感嘆の声をあげた。
全日鱗(第16回・愛知/1980)と振興会(第15回/1983)の二つの大会で頂点に立ち、弥五左衛門紅白の最高傑作と称えられる。
■作出者/広井俊夫(新潟県小千谷市)
■出品者/椋 良昭(島根)

亀の甲(かめのこう)の愛称で呼ばれたこの紅白は、素晴らしい肉付きの体形に、大日レッドと呼ばれる燃えるような紅、鱗一枚一枚を染めていったような味わいのあるキワの良さと整ったサシで、その魅力を存分に見せつけた。
ZNA第17回大会(広島/1981)の全体総合優勝鯉。
■作出者/大日養鯉場㈱・間野 實(新潟県小千谷市)
■出品者/大谷末富(広島)

全日本総合錦鯉品評会史上、海外愛好家が持つ鯉が初めて大会総合優勝を勝ち取った歴史を塗り替えた銘鯉。所有者の母君の名前をそのまま付け、大切に見守り続けたという思い入れの強い鯉であったとの逸話は有名。第33回大会総合優勝。
■作出者/㈱阪井養魚場・阪井弘二(広島県三原市)
■出品者/楊 立青(台湾)