もう1本みどりで、当歳17㎝です(⑯―A)。これは松江さんの展示会で見て、良くなるだろうと思って真っ先に買いました。そして当店のお客様に買っていただき、2歳でこうなりました(⑯―B)。39㎝です。このときに関東大会(2021年)に出して、40部で総合優勝を取りました。もう1年立てて4歳で68㎝(⑯―C)、現在は5歳で71㎝になっています(⑯―D)。前の年までは後半がちょっと細い鯉だったんですが、1年野池で立てたら肉が入ってズドーンとした格好になりました。
⑯/みどりの子




―次は「あやめ」という親の子の変化を見ていきます。これは数が少ないのであまり出回らない鯉です。特にこの鯉は専務の秘蔵の鯉だったんですが(⑰―A)、無理やり分けてもらいました(笑)。写真は2歳のときの姿で、スラッとした感じの鯉ですね。今は3歳になって当店の池にいます(⑰―B)。70㎝なので10㎝伸びました。
⑰/あやめの子


もう1本あやめの子で、これも2歳のときに買いました(⑱―A)。この時点ではちょっと細身の鯉です。
飯塚 これはよく覚えてます。
―この鯉は他とはちょっと違う異質の鯉だったので、面白いなと思って買ってみました。3歳になると紅が決まってきましたね(⑱―B)。そして4歳で77㎝(⑱―C)。あやめはどんな系統なんでしょうか。
飯塚 メスが大日系統です。これはどちらかというと親鯉を作りたくてかけ合わせをしたので、数はあまり放してないんです。
―なるほど。だからあまり表に出てないんですね。
⑱/あやめの子



―「白桃」(⑲)は現在の松江紅白の主力系統の一つです。今何㎝ありますか。
飯塚 そこまでガンガン飼育していないので、85〜86くらいです。90まではないですね。
―これを親にしようと思ったのはなぜですか。
飯塚 野池から上がったときに体の雰囲気と白地が良かったんです。ただ、紅がパサパサしてるからどうかな、というのもありました。白桃を親に使い始めた頃から、一流よりもワンランク、少しだけ下のメスを使うほうが有効じゃないかと思うようになったんです。だからパッと見たら「これが親鯉?」と言われると思うんですが、親鯉に華やかさは必要ないんじゃないかという考えがあって、あえてちょっと下げてみた親鯉の中の1本が白桃です。出てきた鯉はそれまでとはまったく違ったので、松江はこのやり方で行くという転機になりました。実際に、子供は5歳で90㎝近くになるものがどんどん出ているので、間違ってはいないと思います。
―私は今まで松江さんの鯉を見てきて、白桃の子が一番安定感があると思っています。白桃は何年くらい採っていますか。
飯塚 一番上が6歳になります。
―生産者は当たり腹の子を親に使いたいと言いますね。
飯塚 そうです。一番の理由は確率を上げるためですね。良い結果が出ている親は、子にも期待できるので。問題はそれにかけるオスなんですが、良いもの同士をかけ合わせれば良い鯉が出るという考えは、もう完全に頭から外しました。いろいろうまくやって、トータルが100になればいいという考えです。そこは感性の問題になってきます。
⑲/「白桃」

―生産者の腕の見せどころですね。では白桃からどういう子が出ているのかということで、これは2歳60㎝です(⑳―A)。この時点では白桃にしてはちょっと細身ですね。3歳では69㎝になり(⑳―B)、紅が結構乗ってきて、キワもサシも締まってきました。そして4歳になるとかなり幅もついてきました(⑳―C)。私は若いうちに幅が出るよりも、大きくなってから幅が出るほうが伸びが来るんじゃないかと思っているので、2歳時のボリューム感はあまり気にしません。
⑳/白桃の子



この鯉も当店の池にいて、まずは2歳の姿です(㉑―A)。複雑な模様なのでサシギワが決まっていないんですが、3歳になってだいぶ落ち着いてきました(㉑―B)。もう1年ぐらい飼えば、もっとキワがしっかりしてくるんじゃないかと思います。
㉑/白桃の子


白桃の子をもう1本、2歳秋で60㎝です(㉒―A)。これは本当に良い鯉で、専務に拝み倒して買いました。そして3歳で71㎝(㉒―B)。白桃の子はこのように順調に大きくなっていくので、松江さんの主力と呼ぶにふさわしい親鯉だと思います。
㉒/白桃の子

