―そしてもう一つ、松江さんの主力に「雪蓮」(㉓)という親がいます。これはどんな系統でしょうか。
飯塚 大日さんの系統になります。最初に見たときからすごい鯉で……。ただ、親鯉としては課題もあったので、仔採りにおいてはいろいろ悩みに悩んだ鯉でしたね。
―その苦労の甲斐があって、現在の松江さんの主力系統の一つになっています。

㉓/「雪蓮」

 この鯉は2歳のときに買って、写真は3歳の姿です(㉔―A)。初代のオスとの組み合わせから出た鯉です。手ビレのすごく綺麗な鯉だったので、いいなと思って買いました。4歳がこれで(㉔―B)、模様がちょっとパラパラしてる鯉なんですが、だんだん紅が締まってきて今は5歳で85㎝になりました(㉔―C)。

㉔/雪蓮の子

 雪蓮からは、ちょっとポチャッとしたこういう体の鯉も出るんですよね(㉕―A)。
飯塚 卵を2つに分けて、これは「六星」のオスのほうなので。
―オスのかかりが違うんですね。柿紅でちょっと薄いタイプで、ポチャッとしていたのが3歳ではズラーッとした感じになりました(㉕―B)。これはいいなと思って立てたら、またポチャッとなりました(㉕―C)(笑)。紅は柿紅ですが、じっくり仕上がってくる鯉だと思うので、私はこういう紅は好きです。

㉕/雪蓮の子

 もう1本、これも以前のオスとの組み合わせの子供で2歳です(㉖―A)。これが3歳(㉖―B)、4歳(㉖―C)、そして現在5歳の姿です(㉖―D)。伸びは結構良いので、キワがもう少し締まってくればいいかなと思います。

㉖/雪蓮の子

 次の鯉は松江さんの当歳のイベントで買いました(㉗―A)。まだボヤッとした、当歳独特のサシ、キワのしっかりしていない感じが出ていますが、松江さんの紅白なら大丈夫だろうということで買ってきました。
 翌春の野池に放す前になると(㉗―B)、だいぶサシは解消されてきたのですが、まだちょっと重たい感じはします。ところがこれがもう1年経つと、二段目のサシが綺麗になるんです(㉗―C)。これが松江さんの紅白のいいところです。当歳のときはボヤッとしていたサシが締まってくるのは、鯉の醍醐味の一つではないでしょうか。現在はカミソリで切ったように綺麗になっています(㉗―D)。このように紅ができあがって厚みが増してくると、鯉の綺麗さがいっそう出てきますね。

㉗/雪蓮の子

 月刊錦鯉の今年2月号の表紙に掲載した鯉も雪蓮の子です。専務も覚えていると思いますが、ちょっと細くて2歳の中では一番小さかったぐらいの鯉でした(㉘―A)。この年は売り出しのときにジャンケンで負けたのでカシラが買えなくて、これは二番目の鯉なんですが、3歳になると腰に肉が入ってきました(㉘―B)。これは新しいオスとの組み合わせから出た子なんですよね?
飯塚 4Dの子供をかけています。
―この鯉はもう2〜3年飼えば面白い魚になると期待しています。以上が雪蓮の子供でした。今回は紅白をテーマにお話ししてきましたが、当店のお客様である太田(明宏)さんが所有されていた銀鱗三色が今年の全日本で大きな賞を受賞したので、番外編としてその変化も見てみましょう。

㉘/雪蓮の子

 これが当歳のときに松江さんから仕入れた姿で、当時13㎝ぐらいでした(㉙―A)。当店の売り出しのときに太田さんが見て、パッと買っていただきました。果たしてその鑑識眼やいかに……。
 翌春はこんな感じになりました(㉙―B)。17㎝ぐらいです。緋が少し増えて、頭の緋模様がくっつきましたね。そして墨も出てきました。このときに国際幼魚(2022年)で18部ゴールドを受賞しました。これはどういう親で採ったんですか?
飯塚 オスは大日さんの銀鱗紅白、メスは広島の竹田さんがわずか数本でしたけど作られた魚がいて、そこからできた松之助の血筋の親です。
―松之助の血が入っていると比較的早くに墨が出て、あとで収縮するケースが多いのですが、この鯉は逆に墨が出てくるタイプで、それが意外でした。まだ小さかったので、この年は野池で立てずに当店の5トンの泉水で飼いました。
 そして秋に36㎝になりました(㉙―C)。ここで墨が引いたんですね。どうしようかなと思ったんですが、メスと判明したので野池で立てたところ、3歳で墨がパチっと戻りました(㉙―D)。白地の、緋がちょっと足りないかなというところにちょうどよく墨が出てきました。顔幅もついてきて、ふくよかな体型になってかなり大人っぽくなりました。このときに関東大会(2023年)で55部総合優勝を受賞しました。
 そして翌年も野池で飼いまして、60㎝になりました(㉙―E)。かなりボリュームがついて、墨もさらに出てきました。ぼやけていた墨ギワも綺麗になり、ちょうどいいところに墨がまとまりましたね。緋も綺麗です。このときは関東(2024年)で60部総合優勝になりました。
 そして今年の全日本で60部桜賞を受賞しました(㉙―F/続く全国若鯉でも63部桜賞)。長く綺麗な状態で楽しめた鯉です。松江さんは銀鱗でもこういう遊び方ができます。

㉙/松江銀鱗三色