第55回全日本総合錦鯉品評会速報
袁建棟氏は2度目、接戦制した昭和は10大会ぶり世界一
前年秋から続く品評会の総決算であると同時に、多くの錦鯉関係者にとって新年の初戦にして最大の目標となる全日本総合錦鯉品評会。55回目を迎えた今回は、1月21日㈫の設営から26日㈰の撤去まで6日間の日程で、東京流通センター第1展示場を会場に開催。26か国・地域(日本・中国〈香港、マカオ含む〉・台湾・アメリカ・イギリス・イタリア・インド・インドネシア・オーストリア・オランダ・カナダ・シンガポール・スイス・スリランカ・タイ・ドイツ・バングラデシュ・フィリピン・フランス・ブルネイ・ベトナム・ベルギー・ポルトガル・マレーシア・ルーマニア・南アフリカ)からの参加があり、1843尾の錦鯉が会場を埋め尽くした。
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出品数は前回より170尾あまり減ったが、限界に近づいている会場のキャパシティを考慮すれば、一概にマイナスとは言えないだろう。減少の理由の一つとして考えられるのは、「出品鯉の厳選」ではないだろうか。それは所狭しと並ぶプールの、ほんの1列を見るだけでも明らかで、勝負できる鯉に絞ってエントリーしている出品者が多いことがうかがえる。レベルは年々上がり続けており、特に御三家に関しては、地区大会クラスなら確実に区分総合や各部総合の候補になると思われる鯉が、全日本では賞なしというケースが珍しくない。以前は「穴場」と見られていた品種や部にも、近年は優秀鯉が出品されることが増え、入賞のハードルは確実に高くなっている。
24日㈮午前10時、「世界一」の称号をかけた審査が始まった。今大会では、審査班を従来の12班編成から14班編成に変更。これは各班の担当区分を調整することで、審査に要する時間の平準化を目的としたもの。なお、審査員の総数(80名+審査員長1名)に変更はない。
大会総合優勝の審査は、菅豊審査員長(全日本錦鯉振興会名誉顧問)を先頭に全審査員が列を作り、出品プールをくまなくチェックしていく。歩みはゆっくりながら、その表情は真剣そのものだ。
そしていよいよ投票へ。1班から14班、最後の票を菅審査員長が投じると開票が始まる。投票用紙が81枚と多いことに加え、集計に決して間違いがあってはならないことから、この作業に時間を要するのはいつものこと。クライマックスに向け、緊張感が高まる。
結果は8尾に票が入り、得票数上位は受付番号2275の95部大正三色が29票、同1004の95部昭和三色が27票、同2331の95部紅白が10票、同2256の95部大正三色が9票という順で(以下2票獲得2尾、1票獲得2尾)、上位の3尾が2回目投票へ進んだ。
上位2尾が接戦だったことから、過半数による決着はつかないと思われた2回目投票。昭和が37、三色が35と順調に票を積み重ね、ここで昭和が逆転した。
運命の決選投票は再逆転も十分ありえる展開に。10大会ぶりの昭和か、第53回大会でひさびさの頂点に立った三色が、ここでもその勢いを見せつけるのか……。3票差の接戦を制したのは、受付番号1004、袁建棟氏(中国)出品の95部昭和三色だった。大日養鯉場㈱の生産鯉で、2023年の第63回新潟県錦鯉品評会(農業祭)で全体総合優勝一席を受賞している。2024年秋に三信トレーディング㈱の仲介で袁氏が入手し、大日養鯉場㈱の泉水で飼育、7歳96㎝での出品となった。親鯉は「BIG BANG」。

農業祭受賞時とは墨の雰囲気がかなり変わり、明るい紅と美しい白地、そして体格が見事に融合した昭和と言えるだろう。昭和のチャンピオンは第45回大会(岡山桃太郎鯉作出)以来で、大日養鯉場㈱が昭和で受賞したのは意外にも第43回大会までさかのぼる。全日本はこの10年、紅白の強さが目立っていたが、昭和と三色の活躍は錦鯉ファンにさらなる楽しみを与えてくれそうだ。
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作出/㈱阪井養魚場 取扱/成田養魚園㈱
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作出・取扱/㈱阪井養魚場 取次/中森トレード㈱


大魚の部総合優勝は、決選投票に進んだ95部大正三色(田中龍平氏出品、㈱阪井養魚場作出、成田養魚園㈱取扱)が、大会総合の1回目投票で3位の10票を獲得した95部紅白を下して順当に受賞。前回大会も同賞を受賞しており、昭和を上回る迫力ある体型を披露したものの、あと一歩及ばなかった。紅白の最終成績は宮日出雄賞(潘志成氏出品、㈱阪井養魚場作出・取扱、中森トレード㈱取次)。その他の上位入賞鯉は写真掲載のとおりで、今大会も外国人の活躍が目立った。
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Vicha Poolvaraluk(タイ)
作出/高野耕平 取扱/成田養魚園㈱
取次/Thai Nippon Fish Farm
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Benedict Campos(フィリピン)
作出/伊佐養鯉場㈱ 取扱/成田養魚園㈱
取次/Tategoi House
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Lai Kok Land(マレーシア)
作出・取扱/㈱阪井養魚場
取次/Aka Koi Centre
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Benedict Campos(フィリピン)
作出/㈱阪井養魚場 取扱/成田養魚園㈱
取次/Tategoi House MAX KOI FARM
 作出/岡山桃太郎鯉 取扱/成田養魚園㈱ 取次/KOIKICHI-FISH-FARM-682x1024.jpg)
Vicha Poolvaraluk(タイ)
作出/岡山桃太郎鯉 取扱/成田養魚園㈱
取次/KOIKICHI FISH FARM
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Hartono Sukwanto(インドネシア)
作出/近藤養魚場㈱ 取扱/成田養魚園㈱ 取次/Samurai Koi Centre 鯉牧場
 作出/関口養鯉場 取扱/成田養魚園㈱ 取次/Tategoi-House-682x1024.jpg)
Benedict Campos(フィリピン)
作出/関口養鯉場 取扱/成田養魚園㈱
取次/Tategoi House
 作出/玉浦養魚場 取扱/成田養魚園㈱ 取次/Aka-Koi-Centre-683x1024.jpg)
DDH Hashim(マレーシア)
作出/玉浦養魚場 取扱/成田養魚園㈱
取次/Aka Koi Centre
 作出/大日養鯉場㈱ 取扱/成田養魚園㈱ 取次/Samurai-Koi-Centre-683x1024.jpg)
Yohanes Jusuf(インドネシア)
作出/大日養鯉場㈱ 取扱/成田養魚園㈱
取次/Samurai Koi Centre
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北村 広政(東京)
作出・取扱/㈲面迫養鯉場
 作出・取扱/大山養魚場 取次/Samurai-Koi-Centre-682x1024.jpg)
Tesar Gusmawan(インドネシア)
作出・取扱/大山養魚場
取次/Samurai Koi Centre
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Sulisam(インドネシア)
作出/㈱丸博養鯉場 取扱/成田養魚園㈱ 取次/KOI-UMEDA JAPAN㈱
Japan Direct Koi Center
 作出/㈱和泉屋養鯉場 取扱/成田養魚園㈱-683x1024.jpg)
外山 隆寛(愛知)
作出/㈱和泉屋養鯉場
取扱/成田養魚園㈱
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袁 建棟(中国)
作出・取扱/㈱阪井養魚場 取次/㈲錦松
袁氏は25日㈯夜の懇親パーティーで、大日養鯉場㈱に感謝の意を表し「このような昭和を生産されたのは大変素晴らしいことで、錦鯉の楽しみを改めて感じることができました」と話した。昨年秋の購入時に見たときは、体の太さや墨の上がり具合において、今回の全日本に出すのはまだ早いと思っていたそうだが、搬入時の姿は数か月前とは大きく変わっていたという。袁氏は本大会で二度目の大会総合、昨年11月に初開催されたワールドニシキゴイショーでは初代チャンピオンに輝くなど、いま勢いのある愛好家の一人で、今後の活躍も間違いないだろう。
一般公開の25日㈯・26日㈰は、今年も国内、海外から多くの愛好家、関係者が訪れ、例年に劣らぬ賑わいを見せた。会期中には飼料メーカーによる勉強会のほか、振興会海外会員向けに錦鯉飼育士資格取得のためのセミナーなども開催された。受講した19名は、海外会員では初となる錦鯉飼育士の認定を受けることになり、正しい知識を通じて自国での錦鯉普及・発展に貢献することが期待される。
表彰式にはチャンピオンの袁氏を筆頭に、多数の受賞者が参加。記念撮影では袁氏を囲んで関係者が壇上に勢揃いし、最後は恒例の胴上げで締めくくった。
今大会は出品数がやや減ったとはいえ、会場内のスペースに余裕がないことには変わらず、特に商社ブースエリアは夢鯉展と共有しているため、通路がかなり狭くなっている。人が集まると身動きがとれないほどの状況になることもあり、ぜひとも改善を求めたい。世界的なイベントとして注目度が年々高まっているだけに、スペースが確保できればより多くの出展が見込めるはずだ。それは来場者の楽しみが増えるだけでなく、業者間の交流が活発になることで錦鯉業界の発展にもつながっていく。
7大会連続で外国人がチャンピオンとなり、世界大会の様相を呈している全日本。国際化は喜ばしいことながらも、錦鯉の発祥国として日本人の活躍にも期待したいところ。
あと一歩に迫っている田中氏に、今後も強力な外国勢が立ちはだかるのか。そして、大日、阪井に続く第3勢力は……。次回大会に向け、今から興味が尽きない。



平澤久司前理事長、佐久間一前理事、
児島徳昭前関西地区長


