愛好家増へ、課題は冬の飼育

YouTube等が入口の役割を

—飼育に関して内地と比べてハンデを感じる部分はありますか?

高橋 やっぱり冬ですね。もちろんボイラーは焚くんですけど、しっかり餌をやれるほどの水温にはできないので、野池から上げて春までの間、うちの店で飼育しているとやっぱりきついなというのはあります。大きい鯉に関しては特に。

—やはり燃料代が……。

高橋 すごく高くなりました。大きい池は17℃まで上げるのが精一杯で、餌もそんなにやれないし。当歳のほうは21℃まで上げて餌もやってますけど。

—北海道で錦鯉を飼う人を増やそうと考えたとき、そこが課題になりますね。

高橋 冬が大変というのはどうしてもあります。

—基本的には屋内じゃないとダメなんですよね?

高橋 外の庭池で越冬させてるお客さんもいますけど、やっぱり氷が張ってるし、春に何本か落ちたりするのはしょうがないですね。だから外池で飼っているお客さんには、冬の間だけでも中に移動できるようなプールなり水槽なりを作ってもらえれば、という提案はしています。もちろんできる方とできない方がいますけど。

—以前本誌で紹介した平島さんのような?(2023年10月号)

高橋 ああいうのが理想的ですよね。越冬ならシートのプールで十分なので、それを置く場所がある方ならそうやってもらったほうがいいと思います。外で飼って氷が張る中で冬を越せても、結局春に死んじゃったりするので。

当別町野池での池上げ(撮影・一条よしのぶさん)
選別や池上げは同店のお客たちと

—夏は鯉にとって過ごしやすい気候になったようですが、問題は冬……。そこが、北海道で錦鯉愛好家の裾野を広げるためのカギになりますね。そのあたりのノウハウを札幌錦翠さんは持っていると思いますけど、問題はこの広い北海道に、お客さんのフォローができる鯉屋が札幌錦翠さん1軒しかないという……。

高橋 そうなんですよ。特に夏場は行きたくても行けないし。

—ライバルになっちゃうかもしれませんけど、本当はもう1軒ぐらいあったほうが?

高橋 1軒でも2軒でも(笑)……。そうなれば、もっと飼う人が増えるんじゃないかなという気はします。

—とはいえ、北海道で一番の老舗として、札幌錦翠さんの役割は引き続き大きいと思います。お店の特徴として、初心者から品評会で賞を狙いたい人まで、バランス良く鯉が揃っているというのが私のイメージです。

高橋 品評会に出せる鯉は年によって多かったり少なかったりなので、本当に難しいところなんですけど、バランスの良い品揃えが理想的ではあります。

—いろいろな層のお客さんに対応できるように。

高橋 若い人も結構来てくれますよ。こういう店は北海道でうちぐらいしかないから、テレビの取材とかもときどきあるんですよ。それを見て来てくれたり。ここ4〜5年でお客さんが増えたなという実感はあります。YouTubeとかが入口で、うちに来てくれるようになったお客さんも結構いますね。「うまく飼えないんだけど、どうすればいいの?」って相談に来たり、もう少し良い鯉が欲しいとか。全道各地から電話が来たり、直接店に来てくれる方もいます。

北海道では屋内に越冬用のプールが設置できれば理想的と高橋さん

—北海道は広いので、思いもよらない地域で飼っている人もいるんでしょうね。

高橋 それはもう根室から稚内から……飼っている方はたくさんいるみたいです。

—そういう意味では責任重大といえますね。北海道の錦鯉愛好家にとって最後の砦というか。

高橋 改めて言われるとそういうことなのかなって思うけど、そこまで使命感を持っているわけでは(笑)……。まあ楽しい趣味だと思うので、興味を持ってくれる人がもっと増えればいいなとは思います。北海道だと外は厳しいから、水槽で飼ってる人は結構いますよ。

 その上のレベル、品評会に出すような人となるとそんなに多くはないんですけど、せっかく良い鯉を買ったんだから一回出してみませんかとお勧めすることはあります。北海道大会なら比較的手軽に出せるので、品評会デビューにはいいですから。

—毎年品評会の時期はバタバタですよね。札幌錦翠さんの取り扱い鯉がとにかく多くて。

高橋 もう本当に(笑)……。

—かなり無理をしている部分もあると思いますが、北海道の愛好家のためになんとか頑張ってもらって(笑)

高橋 そうですね。日頃お世話になっているお客さんばかりなので、そこは恩返しというか。それにしても、北海道の品評会もレベルが高くなりましたよ。高樽さんもそうだけど、最近は鯉牧場さんもすごく良い鯉を持ってくるから。

—その中で自家産が毎年結果を出していて。

高橋 本当に嬉しいことです。

—北海道唯一の錦鯉販売店として、これからも愛される店であり続けてほしいと思います。そして自家産にもますます期待しています。

撮影・一条よしのぶさん