「足りない鯉」を安く仕入れる

そこに墨出れば良いバランスに

―関西地区大会では取り扱い鯉が毎年上位に入っていますね。
辻川 2022年の全体総合(①)は2歳で買うて1年野池に入れて、3歳でも墨はパラパラしてたけど良い鯉でした。お客さんには「こんなん買うたらあかん」って売らなかった(笑)。75cmぐらいで池に入れて80で上がってきたとき、新潟の鯉屋が売ってくれと言ってきたんだけど、あかん言うて(笑)。それで持って帰ってきてすぐ今西(康之)さんに買ってもらいました。
 関西で全体を取ってから中国に行って、向こうの全国品評会(第24回中国錦鯉品評会/2024年12月)で全体総合を取りました。何千万円の鯉が出ていると聞いていたので、その中で取ってえらいことやなと(笑)
 2024年の85超部の総合(②)、これも良い三色やで。これは阪井のジャンボ当歳の売り出しのときに、全部で16匹買うたのかな。1年向こうが預かって、そのあと持って帰ってきた中の1匹です。
―第46回の全日本では幼魚総合(③)の取り扱いがありますね。
辻川 あれは墨のないとき、1万パーで20本買うたときの中の1匹。うちで預かっていて、前の年のオール関西でも幼魚総合を取りました。
―全日本に出したときは2歳?
辻川 そう。2歳で25cm。

③/第46回全日本総合錦鯉品評会 幼魚総合優勝
作出/㈱阪井養魚場 取扱/泉州錦鯉 2歳25cm

当歳20cm
2歳24cm

④/関西地区総合錦鯉品評会2022 巨鯉総合優勝
作出/㈱阪井養魚場 取扱/泉州錦鯉 10歳87cm

2歳
関西地区総合品評会2015
壮魚総合優勝 3歳68cm

―当歳のときはまだ墨が少ないですね。全日本受賞時の特徴的な顔の墨もありませんし。
辻川 せやから安かったんです。
―辻川さんが仕入れてくるのは当歳とか2歳が多いんですか。
辻川 そうですね。大きいやつはよう買わん。大きいやつ買うて失敗したら、ねぇ。昔の阪井のオークションは、これから流す魚をプールに入れてあったから、それを見て狙い撃ちして。
―やはり愛好家の頃から目が強かったんでしょうね。
辻川 いやいや……。大きくなることを前提として鯉を探しているだけです。大きくならないとお客さんがみんな怒ってくるんよ。当歳で当てたら良かったと思うし、お客さんも喜ぶやろ。
―完成している鯉ではなく、将来良くなりそうな鯉を買ってくるのが辻川さんのやり方?
辻川 そう、立て鯉。
―例えば2022年の巨鯉総合(④)は、2歳時はほとんど墨がありません。辻川さんとしてはどういうところが良くてこの鯉を選んだんですか?
辻川 俺としては、重ね墨の三色は全然魅力がない。「白場」に墨が来るような鯉を選ばな、そんなん思うて買うたんや。俺が選んでるやつはほとんどそうで、あっさりした白場の多い鯉。
―買った鯉の写真を見ると、まだほとんど墨が出てないような鯉、模様的にはちょっと足りないような鯉も多いですね。

関西地区総合錦鯉品評会2025 最優秀若鯉
作出/㈱阪井 取扱/泉州錦鯉 2歳50cm

国道480号線に面する泉州錦鯉店舗

辻川 みんな買わへんけど、俺はこれでええねん。安く買うことを考えたら、少し物足りんようなやつで。㈱阪井で2歳で買うた墨のない鯉が、4歳で良い値段がついたこともあったね。
―墨がない状態でも、ここに出てくるだろうなというのは何か根拠が?
辻川 それはもうカンというか……。この鯉やったら来るやろうと思って大博打しようかなと。俺はいつでも大博打やから面白いよ。自分もお客さんも楽しめるし。
―2022年の全体総合の三色の墨は2歳のときはパラパラしているように見えますが、そういうのはどうなんですか。
辻川 それは墨質次第やね。ゴマみたいにバーっと出たらあかんけども。墨質が良かったらこれは「来る」と思う。
―辻川さんとしては、ギュッとまとまってくるという想定で買っている?
辻川 そう。あとは鯉の形、格好で買うてる。雰囲気がええなと思って、そんなんで買うてるわけ。50cmやったら50cmの鯉の格好があるやん。そんな感覚で俺は買うてる。
―仕入れてくるのは三色が多いようですね。
辻川 墨がなければ三色が一番安く買えますから。ちょっと物足りんやつに墨が出て三色になって、ちょうどええバランスやなって。買うときからそんなことを頭の中に描いて。紅白のええ柄に墨が出たら嫌味になると思ってる。
―なるほど。

「桁が違う」価格高騰に苦労

負担少なく楽しめる鯉を提供

―野池は大阪にもあるんですか?
辻川 新潟です。今は4面で飼ってて、塩谷に2面、木津に1面、虫亀に1面。虫亀のは大きいよ。昔は和歌山にもあったけど今は新潟で、向こうの人に管理してもらって、餌はこっちからキョーリンの生産者用を送って。
―新潟は年に何回ぐらい行くんですか。
辻川 春3回、秋は2回池上げに行って、オークションとかもぐるっと回って。昔はたくさん仕入れても売れたけど、今は値段が高くなってるからいろいろ変わってはきましたね。
―店で売り出しなどは?
辻川 せえへん。駐車場もないし、人がいっぱい来たら大変。
―じゃあお客さんへの販売はどのように?
辻川 池から上がったときに見てもらうのと、春に買うてきたジャンボ当歳を見てもらうぐらい。今は当歳を安く買ってくることを考えてます。そのほうがお客さんに負担がかからへんし。とにかく今は鯉の値段が上がりすぎてる。桁が違うからついていかれへん。
―価格の上昇もそうですし、最近の夏の猛暑も大きな問題ですよね。特に大阪は暑いから大変なこともあるのではないですか。
辻川 水のあるところに行かなやっていかれん。もう水道では……。
―ここは水道水なんですか。夏は水温がなかなか下がらないんでしょうね。
辻川 せやから規模を小さくして、夏場は池を一つ空にしてもええぐらいやな。それにもう73やから、ちょっと仕入れを少なくして、75歳で一応ピリオドをつける段取りにしようかなと。新潟に車で行かれんようになったら終わりやろって。
―そんな寂しいことを言わずに……。鯉の販売だけでなく、修理やメンテナンス関係の業務もあるんですよね?
辻川 このへんではないけど、ちょっと離れたところに。品評会も今はオール関西(関西地区)だけです。関西を盛り上げることを考えないと、地域の発展にならへんから。
―レベルの高いオール関西で、毎年上位入賞を取り扱っているわけですから、泉州錦鯉さんはなくてはならない鯉屋だと思っている愛好家は多いと思います。大阪に根ざした鯉屋として、まだまだ頑張ってくれることを期待しています。