でっかい鯉に惹かれ全国行脚
刺激受け作った800トン池
―桐生錦鯉センターの個性、特徴のひとつとして「大きな鯉」というのがあると思います。
北條 それは今から30年ぐらい前かな。でっかい茶鯉があっちこっちにいて、よくジャンボ賞を取ってました。岐阜県に馬渕さんっていう鯉屋があって、そこはでかい茶鯉がいたから何回も仕入れに行ったね。とにかくでかい鯉を見ると欲しくなるんですよ。
―1mという数字にもこだわりがありましたよね。
北條 そうだね。錦鯉を飼っている人にとって一生に何回あるかわからないけど、やっぱり1mの鯉を育ててみたいという夢、希望があると思うんです。30年前は茶鯉だと1mになるのがいたわけ。だから当時は、でっかいのがいると聞けば仕入れに行ってました。
―それは北條さんの趣味という意味合いも?
北條 趣味なんだろうなぁ。鯉もそうだけど、庭作りで石とか植木もやっぱりでかいものが好きで。
―ここで飼育して1mになった鯉もいるんですか。
北條 もちろんいますよ。下の池で。
―店の前の道路の下にある大きな外池ですよね。500トンぐらいでしたっけ?
北條 「桐生池」は800トンくらいあるでしょうね。
―あれはいつ作ったんですか?
北條 平成8年に完成。
―やはり大きな魚を育てることが目的で?
北條 そうですね。その何年か前に、岡山の桃太郎鯉さんが1500トンの池を作ったんですよ。雑誌にも載ったから、自分も見てみたくて現地まで行って見せてもらって、すごいなと思ったね。それで自分もでっかい池を作りたくなって。
―桃太郎さんがきっかけだったんですね。



北條 でも、うちの土地の広さでは1500トンはできないから800トンになりました。長さは結構あるんだけど。それで企業秘密っていうほどでもないんですが、桐生池は自動給餌器を2台付けていて、餌を出す時刻がそれぞれ違うんです。最初は1台だったんだけど、池が広いから餌に気づかない鯉が常に2〜3匹いるんですよ。それで2台にして、同じ時間に両方とも餌が出るように設定したはずなのに、なぜか1台は出なかった。おかしいなと思って4〜5分経ったら出始めて、4〜5分なら別にいいかとそのままにしておいたのが、結果的には良かったんだね。
というのは、その頃群馬県の品評会で全体総合を取ったこともある佐藤さんという方がいて、「佐藤さん、俺もとうとうでっかい池を作ったから鯉を預かりますよ」って言ったんです。それで入れる鯉を佐藤さんに4〜5匹選んでもらったんですが、全部腹ボテなんですよ。佐藤さんは「だって最初の年だもの。まだ池の良さもわからないのに、良い鯉を預けるのはおっかない」と。それもそうだなと思って腹ボテの鯉を預かったら、およそ半年後に全部すっきりと良い体型になったんです。
―へぇ……。
北條 1台から餌が出て、5分後にもう1台が出る。そのサイクルを鯉が覚えて、最初にこっちを食べながら、次にあっちが出るなというときにものすごい勢いで泳ぐわけ。佐藤さんは「俺の家じゃみんな腹ボテでどうしようもなかったけど、やっぱり池が広いってのは大したものだな」と言ってました。でも広いだけじゃなくて、給餌器の時間がずれていたおかげで、鯉が自分の意思で一生懸命泳ぐ、それが良かったんだね。だから今も5分ずらしています。
―2台の給餌器は結構離れてるんですか?
北條 およそ25m。鯉の様子を見てると面白いよ。1台から出て、もう1台がそろそろ出るだろうと早く来る鯉もいるんだけど、早すぎて出ていないと「しまった!」ってまた元のほうに戻るんです。それでまたそろそろ出るかなって、何回も行ったり来たりして、そのスピードたるや。
―場所取りみたいなことをしてるんですね。
北條 そうなんです。ジェットとかは人間から見ると水流が強いなって感じるけど、その中にいる鯉はゆっくり動いてますよね。うちの池の場合はそうじゃなくて全速力なんですよ。泳ぎの速さ、あれは良いと思うよ。今、丸堂さんの銀松葉と銀鱗の黄鯉が85㎝ぐらいあると思うんだけど、今から秋上げが楽しみ。
―800トンの桐生池は、立て池としての役割もあるんですね。

種別日本一賞/橋本大心 95㎝
桐生錦鯉センター取扱

ジャンボ賞2種/阿久津孝雄 110㎝
桐生錦鯉センター取扱


北條 そうです。自分は庭が好きだから、できれば純和風の石組みの形にしたかったけど、深いから近所の子供が落っこちたりすると危ないので純和風はやめました。だけど単純な形の池はどうも面白みがないから、何となく和風池っぽい形で作ってあります。
―直線的じゃなくて面白い形をしてますよね。
北條 そうそう。池の形についても、さっき言った2台の自動給餌器と同じように鯉にとって良い効果があって。つづら折りというかカクカクしてるんだけど、鯉は見てると池の縁に沿って泳ぐ習性があるみたいで、真ん中をズドーンとはなかなか行かない。端っこを行くんだね。池の壁がくねくねしてると、それに沿った泳ぎ方をする。そうすると、体を右に曲げたり左に曲げたりするわけ。体型に癖がある鯉が、意外とそういうので治ったりします。
―預かった腹ボテの鯉が良くなったのも、速く泳いだり左右に泳いだりした運動の成果が?
北條 そういうのが良かったんだと思う。給餌器も池の形も、結果的にね。それと桐生池はブロック作りなんですよ。深さが3mくらいあるから、見た人に「こりゃブロックじゃもたないぞ」と心配されたけど、きっと大丈夫だよと言って、結果的に大丈夫だった(笑)
ブロックって2トントラックに300枚載るんですよ。業者さんが10回目までは300枚ずつ持ってきたから、3000枚は使ったのはわかってる。その後は「今日は300揃わないかもしれない」「じゃああるだけでいいよ」って半端な数になっちゃったから、正確な枚数はわからないけど、まあ3000枚以上使ってるのは間違いない。積みがいがあったね。
―その後、池を見下ろす形の2階建ての小屋を作ったんですよね。
北條 そう。最初は別に展望台じゃなくて、ただの車庫だったんですよ。それの波板が何枚かめくれてバタバタしてたので、自分で屋根に登って釘を打ってたわけ。作業中に腰が痛くて起き上がったら、ちょうど池が真正面に見えて、この高さから眺めると良いなって。それで途中から2階を作ったんです。
―桐生さんの池とか設備とかを見ていると……。
北條 遊び心(笑)
―そうそう(笑)、趣味的な部分もかなり入ってますよね。
北條 自分は一応商売で鯉屋をやってるけど、お客さんはそれぞれに規模が違っていろんなやり方があるから、それが参考にもなるわけです。真似できればやってみたいなと思うこともあるし。
―僕が初めて桐生錦鯉センターに来た頃には、もう800トンの桐生池はあって、その後に店の向かいの民家を趣味の家のように改装して、いろいろなイベントなどもやるようになりましたよね。個人的に、上の道路からうっそうとした木々の間を抜けると、大きな池が見えてくる……あの感じが好きなんですよ。
北條 高低差があるから変化に富んで良いのかなと。少しの運動にもなるしね。今でも少しずつ手を入れていて、去年か一昨年に池が1個増えました。











