近年はメンテナンスにも力入れ

鯉が好き、愛好家精神は今も

―創業初期とは社会情勢や愛好家の年齢層も変わってきたと思います。国内では高価格帯の鯉が売れにくくなっている中で、商売の方向性についてはどのように考えていますか。
北條 鯉屋だから鯉の販売をするのが一番良いし、そこそこの利益も出るんだけど、今はなかなか鯉が売れないから、湧清水の修理やメンテナンスなどでカバーしている感じですね。最近は、鯉屋なんだけどある意味便利屋、修理屋かな。池掃除も頼まれるし、暑い中よく動いてるなと自分でも思いますよ(笑)
―鯉屋さんって鯉を売って終わりじゃないですからね。
北條 そうなんです。
―そのあたりは、お客さんの高齢化なども関係しているんですか? 自分ではもうできないから……というような。
北條 それはもちろんあります。一方で、始めたばかりで全然わからないから教えてほしいという人も多いんですよ。
―そこでの対応は重要ですよね。お得意さんになってくれるかだけでなく、鯉を続けてくれるかどうかも、初期の対応による部分が大きいと思います。
北條 そう。だからママさん(妻・恵子さん)や息子からもよく言われてるんだけど、お客さんに呼ばれたらすぐ行くようにしています。

―売れる鯉の傾向などはありますか。
北條 大きな鯉は特に難しい。逆に、インターネットで調べてお店に来る人には、小さい鯉が人気です。初めてのお客さんは増えてますね。
―小さな鯉と言えば、桐生錦鯉センターのイベントとして、袋詰めの鯉に限定した品評会をやっていた時期もありましたね。
北條 上限が33㎝までで「KIRYU BABY KOI SHOW」という名前で。小さなスペースでも楽しめるやり方はないかなと考えていたとき、ちょうどうちの向かいの家を購入して、そこを改装して店の一部にしたのがきっかけで思いついたアイデアでした。高い鯉、大きい鯉が売れなくなってきているのもあったし、お得意さんが高齢化してるから、でっかい鯉は持ち上げられないし取り扱いも大変だから。
―「KIRYU BABY KOI SHOW」をやっていたときは、若い方も結構来てましたよね。金額的にも手が届く範囲ということで。小さい鯉を買いにくる人は結構いるということですから、そういう傾向は今も続いているんでしょうね。
北條 高齢などで鯉をやめる人はいるけど、新しい人も増えてはいます。最近も8月だったかな。前の年に池を作って水道水で飼ってたんだけど、暑いから井戸があるといいですねなんて言ってたら、じゃあ掘るよって手作業で井戸を掘った人がいました。暑いのによく頑張って。
―パワフルな人ですね(笑)。それと初心者でも買いやすいという意味では、以前自家生産もしてましたよね。
北條 今もやってますよ。およそ15年間。
―あ、そうなんですか。

北條 毎年1腹か2腹だけどね。今年のは特に変わってて、面白い鯉ができましたよ。泥池で大規模にというのではなくて、アマチュア的な規模だけど。まあプールでも飼えますから。
―紅白や大正三色ではなくて?
北條 そう。御三家はあまりやらなくて、変わった鯉が多い。個性的で面白いから。
―桐生さんは販売店ですけど、自分でも作ってみたいという気持ちがあったんですか。
北條 それはどっちかっていうと、自分よりもママさんのほうなんだよね。稚魚とか生産に興味があって。品評会向けは少ないかもしれないけど、逸品鯉的なものはできてます。今年は特に。
―北條さん自身、御三家だけでなく変わりも好きですものね。
北條 品種にあんまりこだわりはない。見た瞬間にインパクトのある鯉っていうのかな、ドキッとするような。種類とかオスメスだとか系統には特にこだわらずに、「うわぁ、すげえなあ」って思うような鯉ですよね。
―好きで飼っていた学生の頃の気持ちが、今も根っこに?
北條 きっとあるんだろうね。鯉屋ってやっぱり鯉が好きでやってる人が多いというか、ほとんどだと思うから。この鯉は売りたくない、とっておきたいというのは必ずいると思うんです。あとは自分のイメージ。こういう鯉を作ってみたいというイメージがあるけど、それは夢だね。
 最近の全国大会を見ると、行き着くところまで行ってしまったんじゃないかと思うこともあります。茶鯉の1mはずいぶん前からいたけど、今は御三家の1mができるようになってるから。果たしてどこまでを求めるか……。それこそ持ち上がらない、運べないんじゃ品評会にも出せないわけだから。まあ鯉だけじゃなくて自分はいろいろ手を出すほうだから、多趣味で楽しんでますよ。

趣味の一つである石もジャンボが好きな北條さん

愛好家増へ中古品の提案も

今年は節目の歳、でもまだまだ

―初めて来店するお客さんが最近は多いという話がありました。国内の愛好家は減っているというのが定説ですけど、鯉に興味がある人は一定数いるということですよね。
北條 そう、意外といるんですよ。さっき来て買ってくれた人、ご夫妻かな、やっぱり初めてのお客さんです。今は池を作るのも大変だから、水槽とかプラスチックやFRPの簡単な容器で飼えるようにできればいいですよね。その際、暑さ対策、アオコ対策、酸欠、飛び出し防止……。小さい鯉を買われる方が多いから、鳥や猫に狙われないように気をつけることも重要です。自分もちょっと時間があるときに、もっと簡単に飼える方法はないかなと考えてます。いろんなアイデアはあるので、そのうち形にしますよ。
 あとは中古品。成形池とかは人気で需要があります。FRP製品、ポンプ、ほかにもいろいろ。リユースというのかな。新品は高いから。
―愛好家の高齢化が進んで鯉をやめる人もいるわけですが、資材、機材はまだ十分に使えるものがあるんですよね。
北條 今年も何台もそういうのを引き取りました。
―それを新しい人に使ってもらって。
北條 お客さんにとっては、新品を買うよりも相当安く手に入るわけで。
―うまく引き継がれていく循環ができるといいですよね。
北條 それを心がけてるから、濾過機とかFRP水槽とか、常に何かしら修理してる。だいぶ技術が上がってきましたよ(笑)。あとは池のメンテナンスということについて言えば、鯉は生きものだから病気とかに早めに気づくように。ケガ、病気、最悪死んじゃうこともあるから、それをいかに少なくするかですね。ちょっとした消毒で防げることも多いんだけど、そのへんは慣れてないと虫が付いてたりしてもなかなか気づかないんですよ。だからお客さんの家に行ったらざっと池を見て、おかしなところがないか、常にメモ用紙とカメラを持ってチェックしています。ある程度は役に立ててるかな(笑)
―そりゃそうでしょう(笑)。じゃなきゃ群馬で一番の老舗になってないでしょうから。鯉屋の評価基準というのは品評会成績などいろいろありますが、その中でも営業年数の長さは大きいと思います。根強いファンがいて、支持されてきたということですから。
北條 品評会の取り扱い成績で言えば、うちはあまり良くないと思う。というのも、言い訳するわけじゃないけど、良い鯉を持ってる人は結構いても、あまり品評会に出したがらないんですよ。出せばいいところに行くのになぁと、ちょっと歯がゆいというか。品評会を全然意識してなくて、犬猫感覚というか、鯉をペット的に捉えてる人も多いですね。
―それも素敵な鯉の楽しみ方です。ところで27歳で看板を上げて43年ということですから、ちょうど70歳に?
北條 69で、3月で70になります。
―まだまだこれから長いと思うので、今後の桐生錦鯉センターをどのようなお店にしていきましょうか。
北條 これまででっかい鯉、でっかい鯉と言ってきたけど、70になるので「でっかい鯉」から「良い鯉」にシフトして(笑)。中型でもいいかな(笑)
―生涯1mでしょう(笑)
北條 毎日筋トレしてますから、1mの鯉は持ち上がると思います。
―鯉屋さんは70歳ぐらいだと現役でやってる人も多いですから。
北條 まだやりますよ。もうちょい。
―定期的な売り出しなどは?
北條 今はあんまりやってないんですよ。今年(2025年)は1回だけやったかな。お客さんがうちに来られる日も、いわゆるサラリーマンの人と自営業者では違うから。来年はやりたいですね。売り出しはそれこそお祭りじゃないけど、鯉が好きな人が集まって、ワイワイ話をして楽しめれば。
―せっかくイベントスペースの古民家もあるわけですし、年1回でも2回でも定期的なイベントができるといいですよね。そのときはぜひ本誌で告知してもらって。楽しみにしています。

裏庭ではプールを使って生産にも取り組んでいる