Q:鯉は生物学上、性転換しないとされていますが、鯉屋さんと話をしているとメスがオスになったとか、その逆も聞くことがあります。実際のところはどうなのでしょうか。

A:確かに、基本的には性転換しないと考えられています。ですので、生産者さんの思い違いという可能性があります(私も複数回聞いたことがあります)。

 ただし、生物なので中にはイレギュラーな個体がいる可能性は否定できません。精巣と卵巣の両方を持つ個体がいた記録がありますし、私も実際に、ニシキゴイではありませんがマゴイでそのような個体を見たことがあります(その個体が性成熟しているかは未確認)。科学的根拠に基づいた知見がないので何とも言えませんが、コイも多様性の時代でしょうか…。

Q:3月の中旬くらいから急に1匹調子が悪くなりました。12月から5月まで餌は一切やっていません。自分ではエラ病かと思っていますが、餌を切っていてもエラ病にかかるのでしょうか。なお、餌切りの前に消毒はしました。

A:ちょっと情報が少ないのではっきりしたことは言えませんので、ご承知おきください。まず、調子が悪くなったとありますが、何か症状などはあったのでしょうか。あと、飼育条件なども診断の参考になるのでお示しいただけると、こちらも回答がしやすいです。今回は餌をあげていないようなので、屋外で飼育されていると想定してお話しします。

 鰓病とはいっても原因が複数あり、細菌ではFlavobacterium columnareが原因のカラムナリス病、寄生虫では繊毛虫であるトリコジナが原因のトリコジナ症、単生虫のダクチロギルスが原因のダクチロギルス症、粘液胞子虫のミクソボルスが原因の鰓ミクソボルス症などが挙げられます。

 3月中旬の野外の水温を10℃前後と仮定すると、カラムナリス病、ダクチロギルス症、ミクソボルス症は比較的高水温で発症するので候補から外れます。そのため、鰓病であるとすればトリコジナの可能性が高いと考えられます。トリコジナ症は摂餌量の低下や遊泳緩慢、ひどくなると鰓蓋や鰭などから出血が起こります。鰓に大量寄生すると致死性が高まり、大変危険です。

 対策としては色素剤(メチレンブルーやマラカイトグリーン)による薬浴が有効です。池全体に投薬することが困難であれば、個別に取り上げて薬浴してください。塩水浴(0・5%)の併用も有効です。

Q:カキ殻の代用になるものはありますか。有機石灰などはどうでしょうか。

A:まずカキ殻効果ですが、主なものとしてpHが下がりすぎないようすることで、水質を安定させます。水槽の水は、残餌や魚の糞尿により毒性の強いアンモニアが溜まっていきます。濾過バクテリア(亜硝酸菌や硝酸菌)がある程度定着している水槽ですと、亜硝酸菌によってアンモニアは毒性の弱い亜硝酸に変えられ、亜硝酸は硝酸菌によって硝酸に変えられます。そのため、水替えをしていない水槽は硝酸溜まっていきます。

 硝酸は亜硝酸よりも毒性は低いものの、強酸性の物質なので水のpHはどんどん低くなってしまいます。このときカキ殻があると、構成成分であるカルシウムが水に溶けだし、pHの低下を防いでくれるのです。この役割持つものとしては、サンゴ砂などが挙げられます。サンゴ砂もカルシウムで構成されているため、同様の効果が期待できるでしょう。

 有機石灰ですが、そもそも有機石灰自体がカキ殻を含めた貝類の貝殻や卵の殻からできていますので、同様の効果が得られるかもしれません。しかし、細かく粉砕されているものについては、カルシウムが水に溶けやすいため、逆にpHが上がりすぎることもあるので、注意が必要です。