預けていた鯉の9割を新池に
改善点はあるが目標に向かって
―去年の10月から魚を入れ始めて、冬はこの池で越したんですね。
吉田 秋以降は、品評会のたびに全国から魚を持って帰ってきて。
―鯉屋さんに預けていた鯉を?
吉田 そうです。終わったらここに持ってくるというのをずっとやっていました。だから去年の愛鱗会の国際品評会は、預けていた鯉を「全部出し」したんですよ。
―今はすべての鯉が自宅池に?
吉田 預かってもらったほうが良くなる鯉は、ここに持ってきて失敗したらいけないので少しは預けていますけど、全体の1割ぐらいですね。品評会に出して、ピークを迎えたと思われる鯉は全部持ってきました。持ってくるたびに、この10年あちこちでよく鯉を買ったなと思いましたよ(笑)
―それだけの数を持ってくると、消毒などの作業も大変ですね。
吉田 そうなんです。追ってYouTubeなどで公開していきたいと思うんですが、キャンバスを張って水合わせをして、薬浴をしてから入れています。2本ほど落としちゃいましたけど、これといった大病はせず、今のところは順調かなと思います。
―社長はかなりいろんなところから買ってますから、なかなか厳しい環境ではありますよね。
吉田 そうなんですよ。条件的には過酷だと思うんですが、商品力が素晴らしいのか、私の腕が良いのかわかりませんけど(笑)
―越冬もうまくいったようですね。
吉田 はい。井戸水パワーで、水温はよほど低いときを除けば15℃以上あったので、消化吸収の良い餌であれば舐める程度にあげることはできます。屋外なのでどのくらい下がるか気になっていたんですが、思ったより下がらなかったですね。
―この時期(6月7日)は餌は何をやってるんですか?
吉田 そろそろシーズンインなので、メディカープMAXを30%、横綱を30%、勝鯉を40%です。完全に「でかくする仕様」ですね。メディカープMAXで健康を保ちながら、胚芽の横綱と、増体の勝鯉を入れて。その前、冬から春先までは消化吸収に優れる将軍と、メディカープMAXの1:1をずっとあげ続けていました。
―梅雨に入ってからはどうでしょうか。
吉田 今年の梅雨が平年並みの気候であれば、梅雨の間は少し給餌量を減らそうかなと思っています。露天の池ということで水温の変化があるので、メディカープMAXや富士桜の比率を増やして。


―メディカープMAXは水温が不安定な時期に良い餌ですよね。
吉田 MAXはきつすぎると勘違いされる方もいるんですが、薬ではありませんので。少々お値段が張りますが、可能であれば梅雨の時期はメディカープMAX100%が鯉には良いです。
―メディカープMAXは継続給餌ができるというのが大きなメリットですからね。そして梅雨が明けたら、1トン池で水道水のときは水温が高すぎて餌食いが落ちることもあったようですが、この池なら十分に餌がやれそうですね。
吉田 水温が上がりすぎて困ることは、まずないかなと思っています。梅雨明け後の本格シーズンは勝鯉50%、将軍25%、横綱25%にします。横綱は胚芽ベースで消化吸収を高めているほか、国産サナギを使用しているのが特徴です。暑すぎて食いが落ちる時期に、サナギによって嗜好性をアップさせるわけです。また、シルクロースという健康維持の成分も配合しています。
水温は池によって違いますが、やはり全国的な傾向として夏は高温になってきていますから、鯉がバテて高タンパクの餌だけでは食いが落ちることが多くなっています。そこで私としては、胚芽50(将軍、横綱)、高タンパク50(勝鯉)の組み合わせを推奨します。弊社の研究機関でも、胚芽を半分混ぜたほうが食べる量が増え、魚体重が増えることが立証されています。
―なるほど。これは使用水が地下水、水道水にかかわらず皆さんに参考にしていただきたい提案ですね。
ところで池を作ってから、ここまではおおむね順調ですか?
吉田 最初にちょっと漏れてFRPを貼ったのは想定外でしたけど、その後はこれといったトラブルはないです。
―今まで使っていた1トンFRPも、引き続き締め飼い用として使っているんですね。
吉田 そうです。本当は濾過槽もひっくるめてこっちの家に持ってくるつもりだったんですけど、池の循環水を途中から引っ張ってきています。だから1トンのほうはかけ流してるだけなんですよ。オーバーフローしたぶんは井戸水を足して。
―1トンには濾過槽はないんですね。
吉田 そうです。フンは流れていかないので、定期的に網で取り除く必要はあります。
―今後、池にもう少し手を加える予定はありますか?
吉田 最初から全部は上手くいかないよというのは皆さん言われていたんですが、一番気になっているのは池の泡です。毎日ポン抜きをすれば消えると聞いていたんですが、なかなか消えない。やっぱりこれだけ飼っていると(68本)難しい部分はありますね。だからオーバーフローを作っておくべきだったなと思って、今からできるかどうか業者さんに聞いているところです。
―この池での今後の目標があれば教えてください。
吉田 ちょっと時間はかかりましたけど、預けていた魚を入れて給餌器も付けたので、ここできっちり育てて品評会で上位入賞するというのが当面の目標になります。
―やはり自分で育てた鯉が賞を取ると嬉しさも倍増ですよね。さらに、日動さんの商品開発にもつながっていきそうですし、今後の展開が楽しみです。愛好家の皆様には、吉田社長のSNSにも注目してもらいたいですね。

